2015 Fiscal Year Research-status Report
MEMSを用いた可変メタマテリアルによるTHzビームステアリング素子
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15K17452
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
磯崎 瑛宏 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (10732555)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | MEMS / メタマテリアル / テラヘルツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、テラヘルツ領域の小型ビームステアリング素子を実現することにより、テラヘルツ光学系の小型化を図ることを目的としている。平成27年度においては、これまで試作してきたメタマテリアルの光学応答を、シミュレーションを用いて詳細に調べた。 本試作デバイスの特徴は入射波長と比較してわずか1000分の1以下の大きさの構造をアクティブに制御することにある。このとき、電磁はとその構造の相互作用は、波長オーダーの構造との相互作用と比べて複雑なものとなる。シミュレーションにより光学応答を調べることにより、試作デバイスが、この微小な構造付近に生じる電場増強を上手く利用できていることが明らかになった。 さらに、上記のシミュレーションを実施する過程で新たな知見が生まれた。具体的には、次のようなものである。現在試作しているデバイスは、光学応答する構造として厚さ100nm程度の金の配線構造を用いている。ただし、マイクロマシーンの製作プロセスの制約上、この金配線は厚さ300nmのシリコン基板上にパターニングしている。このとき、テラヘルツから見てシリコンは透明であり、かつ、300nmはテラヘルツの波長のわずか1000分の1に当たるので、ほぼ影響がないと考えていた。しかしながら、金構造のみでシミュレーションした結果と実験結果では10%程度応答波長が異なっていた。さらに詳細に調べると、金構造とシリコン構造が近接場効果により強く応答していることを示唆する結果を得た。これはMEMS (Micro Electro Mechanical Systems)を用いたアクティブメタマテリアルを作製する上で広く使える知見であると期待している。 以上のように、平成27年度は試作デバイスの光学応答をシミュレーションを用いて詳細に調べることにより、小型ビームステアリング素子の設計に有用な知見を複数得ることに成功した。本成果は、学術論文誌の形でまとめ、Optics Expressに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はシミュレーションを用いて試作したデバイスの光学応答の理解を深めることに成功した。この成果は、本研究の目的であるビームステアリングメタマテリアルの実現において、基礎的知見を与えるものである。さらに、その結果を論文として出版することができた。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は光学応答の理解を深めることに集中していた。今年度は、それを発展させて、本研究の目標であるビームステアリング素子の実現に向けた検討を始めるつもりである。具体的には、メタマテリアルの素子単体(メタ原子)の集団としての光学応答の予測と最適制御方法などに関して検討を行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度は一度作製したデバイスを詳細に分析することで研究を進めたため、当初予定していた材料費を消費することなく研究を進めることができた。また、海外での学会発表および海外の研究者とのディスカッションを予定していたが、タイミングが合わず、見送った。以上より、物品費および旅費で差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究を進めていく過程で、メタマテリアル素子の機械動作の評価を行う必要が出てきた。そのため、高速度カメラを購入する予定である。
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Research Products
(1 results)