2016 Fiscal Year Research-status Report
MEMSを用いた可変メタマテリアルによるTHzビームステアリング素子
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15K17452
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
磯崎 瑛宏 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (10732555)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | MEMS / メタマテリアル / テラヘルツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、テラヘルツ領域の小型ビームステアリング素子を実現することにより、テラヘルツ光学系の小型化を図ることを目的としている。平成28年度においては、これまで試作してきたメタマテリアルの新たな駆動方法の検討を行った。 本試作デバイスの特徴は空気圧駆動方法による機械的な変形を用いて光学応答をアクティブに制御するところにある。空気圧駆動方法は、従来広く用いられてきた静電駆動方法と比較して大きな力を印加できるという特徴を有する。しかしながら一方で、空気圧印加に用いるシステムは非常に大きくなってしまう。さらに空気圧チャンバを要するため、テラヘルツ波の透過率が低下し、さらにチャンバに用いる窓材による多重反射により透過したテラヘルツ波が乱れてしまう。これらは、本研究課題の目的である「小型化」と「ビームステアリング」の実現へ向けて本質的な課題である。そこで、新たな駆動方法として、音響波を用いた駆動方法を検討した。 試作したメタマテリアル構造を用いて構造の特性を計測すると、20 kHz付近に共振点を持つことが確認できた。そのうえで、音響波を試作デバイスに印加して構造の変位量および位相を計測した。その結果、共振点付近で3 μm程度の変位を得ることに成功した。さらに、共振周波数の10分の1程度の周波数(2 kHz)において変位量が4 μm程度に達していることが分かった。これは、メタマテリアル素子が薄膜上に形成されているため、その薄膜とメタマテリアル素子の練成運動により共振周波数以外で大きな変位量が得られたものと考えられる。音響波印加時の位相を見てみると、2 kHz付近では位相差ゼロで駆動できることも分かった。 以上のように、平成28年度は試作デバイスの新たな駆動方法を提案し、小型ビームステアリング素子の実現に適用可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は新たな駆動方法を提案し、デバイスへの適用が現実的であることを示した。この成果は、本研究の目的である「小型」ビームステアリング素子の実現を加速する大きな一歩となりうる。さらにこの技術はMEMSメタマテリアルと呼ばれる分野全体に対する提案ともなりうる。従来の計画にはなかった検討であったものの、研究の目的達成のための新たなツールを実証できたことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度はメタマテリアルの小型駆動システムの提案および実現に集中し、小型ビームステアリング素子実現に一歩前進した。今年度は、提案した駆動方法とメタマテリアルの光学応答特性の関係をシミュレーションおよび実験の両面から詳細に検討し、小型ビームステアリング素子の実現を目指す。
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Causes of Carryover |
高速度カメラの購入を検討していたが、中古品の高速度カメラを購入することができ、大幅に安く購入することができたため、物品費に差額が生じた。また、国際学会への参加を計画していたが、取りやめたため、旅費に差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験を進めるための物品購入を計画している。
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