2015 Fiscal Year Research-status Report
印刷薄膜トランジスタ高性能化に向けた印刷電極の仕事関数制御
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15K17457
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
熊木 大介 山形大学, 理工学研究科, 助教 (80597146)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有機トランジスタ / 銀ナノ粒子インク / 界面制御 / 仕事関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、電極化した後の仕事関数を制御できる、有機半導体デバイス高性能化のための新しい銀ナノ粒子インクを開発することを目的とする。仕事関数制御によって、有機半導体とのエネルギー障壁を低減することができ、最終的には、有機トランジスタの低電圧動作や集積回路における寄生抵抗低減などデバイス高性能化につなげる。 これまでの先行研究では、エネルギー障壁を低減するための蒸着電極の表面処理法(Nature Materials, 7, 216)や、エネルギー障壁が小さい電極材料や酸化物を蒸着積層する電極構造(Applied Physics Letters, 90, 073504)が報告されているものの、近年開発が進む、印刷可能な電極材料(例えば金属ナノ粒子インク等)を用いて有機半導体とのエネルギー障壁を低減できるような界面設計手法に関しては、研究が進んでいないのが現状である。本研究ではこれらの界面設計手法の確立を目的として研究を行った。 平成27年度は、新規な銀ナノ粒子を合成し、電極化した後の電極組成や界面分析を詳細に行った。電極化後の仕事関数を測定した結果、4.2eV~5.2eVの範囲で仕事関数を制御できる銀ナノ粒子インクの合成に成功した。さらに、合成した銀ナノ粒子をデバイス応用するため、インクジェット装置で塗布できるインクへ改良を試みた。銀ナノ粒子はコロイド状態で分散しているため、溶媒の極性に分散安定性が大きく左右される。合成した銀ナノ粒子と相溶性が高い溶媒を選定し分散安定性の改善を図った。その結果、インクジェット装置に適用できる銀ナノ粒子インクとすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、主に、仕事関数制御できる銀ナノ粒子インクの合成に注力した。さまざまな保護分子を導入して銀ナノ粒子インクを合成し、スピンコート成膜後の膜の導電性の測定、平滑性の評価、仕事関数測定を行った。目的とする、仕事関数の制御範囲(4.2eV~5.4eV)を達成できる銀ナノ粒子インクの合成に成功しており、今年度の目標はおおむね達成している。 加えて、平成28年度以降で予定している、デバイス応用を見据え、デバイス作製するためのインクジェット装置などの印刷機に適用可能なインク特性へ改良する実験も行った。分散安定性が著しく低下する場合は、導入する保護分子の組成を最適化し、また、適用する溶媒も銀ナノ粒子と相溶性の高い溶媒に変更するなどした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、H27年度に合成した新規な銀ナノ粒子インクを用いて、実際の印刷型有機トランジスタを作製し、高性能化のためのデバイス構造最適化及びコンタクト抵抗の評価を行う。また、従来報告されている電極処理方法は、基板を電極処理剤の溶液に浸漬する手法のため、P型用の電極処理とN型用の電極処理を同一基板上で行うことが難しかった。本銀ナノ粒子インクを用いることで、P型有機半導体とN型半導体のそれぞれに対して最適な電極を印刷装置で同一基板上に作り分け(パターン)できるため、P型とN型トランジスタを同一基板上に形成する必要がある相補型インバータ回路に応用できる。本銀ナノ粒子インクを相補型回路の高性能化に応用し、回路特性に対するコンタクト抵抗低減の効果を検証する。
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