2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K17462
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山崎 憲慈 北海道大学, 工学研究院, 助教 (10732985)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | グラフェン / 原子層セル / 単原子触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
・グラフェン溶液セルの作製と形状制御 前年度に単層グラフェンの繰り返し転写によって、グラフェン溶液セルの作製を実現したが、今年度はセルの評価と形状制御についての研究を進行した。1回目と2回目の転写を行った後の回折パターンを比較すると、2回目のグラフェン転写後、1回目に転写されたグラフェンの回折パターンを維持したまま、2回目に転写されたグラフェンのスポットが新たに現れており、回折スポットの強度を解析すると、2枚のグラフェンの重なり角を正確に評価することが可能であることがわかった。更に実像も考慮することにより2枚が積層したサンドイッチ構造をしていることが明らかとなった。当初予定では金属微粒子、単原子によるグラフェンセルの加工による形状制御を行う予定であったが、TEM観察中の電子線照射によってセル形状が変形する現象も確認され、電子線によるセルのマニュピレーションの可能性が示唆された。 ・金属単原子形成手法の探索と化学状態評価 前年度の研究によって固体表面から単原子を弾き出し、弾き出された単原子同士が集まってナノ粒子を形成することなく、単原子のまま飛来させることができるスパッタリング方法、およびグラフェン上に孤立した単原子の分散体を得ることに成功した(特許出願済み)。今年度は装置を改良した薄膜用スパッタ装置によって、陽極にTEMグリッドを配置し、Ptターゲットをプラズマスパッタリングし、Pt以外の金属についても単原子化が可能であることを見出した。またXPSによる化学状態評価の結果、単原子状態のPtはバルクのPtとは異なる位置にピークが現れ、このようなピークシフトが酸化によるものではなく、Ptのコアレベルのシフトに由来することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラフェン溶液セルの作製に関してはセル内に水分子がどの程度閉じ込められているかの定量化が難しく、当初予定よりもやや遅れている。一方で加工に用いる金属微粒子のサイズ制御に関して当初予定よりもスムーズに実験条件の最適化が進み、大きく進展があった。その結果特許を1件申請する成果をあげた。上記2つの独立した要素技術の進展を総合すると、研究課題の達成に向けおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
金属原子を用いずにグラフェン溶液セルの加工の可能性が示唆されたことは当初予定していなかった結果であり、うれしい誤算であった。また単原子状態の化学状態評価に成功し、バルクと異なる性質を見出したことは大きな発展であり、今後単原子特有の触媒作用についても期待出来る。一方で得られた予想外の結果に対する解釈に時間がかかり、考察のための追実験に時間がかかったことによって論文化が遅れている。投稿中も含め平成29年度中に3本の論文化を予定している。以上のことを総合的に評価するとおおむね順調に推移していると言える。
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Causes of Carryover |
液体セルの形成制御法の開発過程で当初予想しなかった結果が得られ、それを解明することに注力した結果、当初予定していた国際会議での発表を見送ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果の積極的な発信のため、国際会議での発表に伴う旅費に充当する。また論文出版のための英文校正費にも使用する。物品費の使用は計画通りに進んでいる。
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Research Products
(2 results)