2015 Fiscal Year Research-status Report
スピン物性と電子相関を活用した分子素子設計のための理論手法開発
Project/Area Number |
15K17465
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
南谷 英美 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (00457003)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 近藤効果 / 磁気異方性 / 数値くりこみ群 / 分子スピン |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に沿って、数値くりこみ群計算の高速性と汎用性を高めるために、Fortran90による数値くりこみ群プログラムの改良とJavaによるインターフェース用のライブラリの作成を進めた。その結果、数値くりこみ群プログラムに関しては、これまでの倍の速度での計算が可能になった。また、作成したJavaのライブラリを使うことによって、多軌道・多チャンネル模型、磁気相互作用がある場合、局在スピンにおいてスピン軌道相互作用由来の磁気異方性が存在する場合など、様々な模型に対して、簡単なプログラムを作成するだけで、Fortran90による数値くりこみ群プログラムが必要とする初期状態の情報やインプットを作成できる状態になった。 作成したプログラムを用いて以下の様な実績を上げた。 1)Pb(111)上のMnフタロシアニン分子において、リガンドとの相互作用とMn原子内でのフント結合によって、集合的なスピン状態による空間的に広がった近藤効果が現われることを解明した。空間的な広がりや、得られた近藤共鳴状態のスペクトル形状は走査トンネル顕微鏡の実験結果とよく一致した。この成果はPhysical Review Bに掲載された。 2)Au(111)上のFeフタロシアニン分子における、近藤効果と磁気異方性の競合と、それが走査トンネル顕微鏡による分子マニュピレーションによって制御できることを実験グループと共同で明らかにした。この研究内容については、現在投稿論文を準備中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度に行う予定であった、数値くりこみ群計算の高速化とJavaインターフェースの構築が完了し、次年度の課題であった多軌道模型における解析に研究を進めることが出来たため、当初の計画以上に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)Au(111)上のFeフタロシアニン分子における近藤効果と磁気異方性の競合における、境界や磁場応答について詳細に調べ、スイッチング機能の可能性を探る。 2)磁場ではなく、電界でスイッチング可能な系の探索を行う。 3)非弾性スピン反転過程の計算を可能にするプログラム拡張を行う。 4)スペクトル計算をより高精度化する手法(z-averaging等)の実装を行う。 5)模型パラメータを第一原理計算から抽出する方法について探り、より具体的なシミュレーターを構築出来ないか研究を進める。
|
Causes of Carryover |
9月のPsi-k 2015国際会議出張に合わせて、研究所(Donostia International Physics Center)に2週間滞在したため、今年度の旅費支出が当初計画よりも多くなった。そのため計算ノードの増設に予算が足りなかったため、次年度予算と合わせて計算機の増強費用とすることにした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度予算内から50万円を追加して、計算ノード1台を購入する
|
Research Products
(4 results)