2015 Fiscal Year Research-status Report
VO2薄膜の相転移を用いたトランジスタの動作原理解明と低電圧動作実現
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15K17466
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢嶋 赳彬 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10644346)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 酸化バナジウム / 相転移 / 電界効果トランジスタ / 固体ゲート / 集団性 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者が初めて作製に成功した固体ゲートのVO2チャネル電界効果トランジスタを利用して、相転移材料をチャネルとするトランジスタに関する基礎的な特性を明らかにした。具体的には、ゲート電圧に対するチャネル電流の応答速度、チャネル膜厚の効果、チャネル・ゲート界面の面方位依存性などに関して、系統的にデータを取得することに成功した。 チャネル電流の応答速度に関しては、当初高速光誘起相転移から予想していたよりも、はるかに遅い速度で、VO2チャネルが転移することを明らかにした。これは、ゲート変調による相転移と、光照射による相転移が、本質的に異なる転移であることを示す重要な結果である。 また膜厚の効果としては、膜厚が大きくなるにつれてゲート変調量が反比例で減少すること、そして膜厚方向にはVO2チャネルがほぼ均質に変調されることを明らかにした。特に、膜厚方向の均質性に関しては、過去に異なる素子において提案はされていたものの、確実な実証はされてこなかった性質であり、それを固体デバイスを用いて確実に示した本結果は、極めて重要なものである。 さらに界面の面方位依存性に関しては、ルチル指数で(101)面の界面が優れたゲート変調効果を示すのに対し、(001)面の界面は大きな変調効果を示さないことを明らかにした。これは、相転移の際にわずかに生じる格子歪みの対称性が、界面の異なる面方位によって阻害されたりされなかったりすることによる。この格子歪みと界面の相性の問題は、相転移材料をチャネルとする際に普遍的なものであり、今回の結果はそうした考え方の基礎になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者が初めて作製に成功した固体ゲートのVO2チャネル電界効果トランジスタを利用して、相転移材料をチャネルとするトランジスタに関する基礎的な特性を明らかにした。具体的には、ゲート電圧に対するチャネル電流の応答速度、チャネル膜厚の効果、チャネル・ゲート界面の結晶方位依存性などに関して、系統的にデータを取得することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
固体ゲートのVO2チャネル電界効果トランジスタの特性をさらに詳しく調べていくとともに、その動作原理を支配する基本的な物理を明らかにしていく。特に、VO2チャネルの相転移が、界面に局所的に蓄積された電子からどのように影響されるのか、定量的なモデルを打ち立てていきたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していた、波長可変光源の購入を一時見合わせ、初年度の実験結果を元に実験計画を再考したいと考えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
VO2チャネルトランジスタの電気特性をより詳細に測定するため、高周波に対応した測定器を購入する予定である。
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Research Products
(6 results)