2015 Fiscal Year Research-status Report
マルチスペクトル偏光3次元動画像ホログラフィック顕微鏡法と生体観察
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15K17474
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
田原 樹 関西大学, システム理工学部, 助教 (50709095)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ディジタルホログラフィ / ホログラフィ / 干渉イメージング / 空間周波数分割多重 / 位相分割多重 / 多波長3次元イメージング / 多次元イメージング / 波長選択抽出位相シフト法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では,生体試料の3次元形態,吸収・光学厚さの波長特性に加え,生体高分子等の偏光に依存する組成も同時に動画像観察可能にするホログラフィック顕微鏡法の開発が目的である。当初の提案として,空間周波数分割多重技術に基づき多波長のホログラムを空間多重記録し,偏光イメージングカメラを撮像素子に用いることで3次元画像,吸収分布とその波長特性,偏光特性を同時記録することを狙いとした。本年度,空間周波数分割多重技術により可視3波長に加え近赤外光も同時高速動画像センシング可能であることを実証し,生体のマルチスペクトル動画イメージング可能性を示した。その際,波長情報と空間情報のトレードオフが課題であることが浮き彫りとなり,現在では空間情報量をなるべく保ちつつ波長多重数の増大を目指し,改良システムを開発中である。また,偏光イメージングカメラで偏光特性を可視化するシステムと信号処理を実装した上で生体の偏光特性を観察し,現在では融合光学システムを構築するに至っている。 一方で,空間・空間周波数面で波長多重記録し,極座標面において波長情報を分離抽出する,位相分割多重技術の本課題への適合性を検討した。研究者らの提案する波長選択抽出位相シフト法により実現される,波長の位相分割多重技術は,視野・空間分解能に優れ,高い光利用効率・波長選択性を有する特徴を持つ。当該技術のカラー3次元イメージング応用可能性を実証し,計測の高速化にも成功した。そして,記録波長数を簡便に増大可能とする光学システムと信号処理アルゴリズムを考案し,その理論の妥当性は確認済みである。現在までに,記録可能な空間情報量の増大必要性に鑑み,将来的には空間周波数分割多重に代わり得る方式であるという知見を得ている。来年度の本研究課題遂行にあたり,高速動画像観察可能性などの適合性を踏まえ空間周波数分割多重方式と並行して研究活動する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では,(1)マルチスペクトル3次元動画像ホログラフィック顕微鏡の構築,(2)偏光情報記録機能付加,(3)構築システムの実験的評価を達成目標としていた。 (1)に対しては,時間分解能10μsecオーダの可視3波長・近赤外光同時3次元動画像ホログラフィック顕微鏡システムを開発した。そのため目標を達成できた。前年度まで記録波長数2であったため,記録波長数の増加が課題であった。記録波長数の増加による波長帯域の拡大に伴い,光学素子による色収差などが顕在化する。波面情報を計測できるホログラフィの特徴を活用し,収差補償の信号処理を施すことで解決を図り,位相画像の歪みを抑えられることを確認した。(2)に対しては,偏光イメージングカメラと偏光光学素子類を導入し機能付加した。また,系に合わせた信号処理を実装することに成功した。結果,偏光特性情報を記録でき,目標を達成できた。(3)に対しては,(1),(2)独立ではあるが,それぞれに実験を行ない能力を示すことに成功した。よって,おおむね目標を達成できた。(1)では,複数の生体試料を用い,毎秒4万コマ超での生体の多波長3次元動態イメージングを実証した。よって,自由泳動する微小生体に対し,3次元画像情報に加え吸収,光学厚さの波長特性の動画像観察を実現した。(2)では,偏光子を試料として特性の可視化できることを確認した。また,(1)のシステムと融合できることを光学機器メーカーと確認済みである。融合システムは構築中である。 挑戦的目標は多波長3次元動画イメージングなど部分的に達成した。当初の目標とは別に,波長選択抽出位相シフト法を用いた波長の位相分割多重記録に関する研究遂行・成果を上げ,課題に対する別解をもたらした。以上を総合的に踏まえ,上記の自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り,(1)複数視点の画像情報を記録・可視化するシステムを融合する。また,得られた画像群から,(2)画質向上させるための信号処理を実装する。そして,(3)種々の観点で画質が向上した,多次元画像の取得を目指す。以上,交付申請書「平成28年度の研究実施計画」記載の通りであり,当初の予定通りの研究内容を推進する。
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Causes of Carryover |
研究遂行に必要不可欠であった撮像素子の購入費用が,当初の予算よりも少なく済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当年度では,光学素子類の購入や論文掲載費,英文校正費,本課題で得た研究成果の発表にかかる出張費などを考えている。また,使用機器が万が一故障した場合の修理費も想定し,円滑な研究推進のために使用する。
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