2015 Fiscal Year Research-status Report
テラヘルツカメラを用いたリアルタイムイメージング分光計測法の開拓
Project/Area Number |
15K17476
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
神田 夏輝 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 特別研究員 (60631778)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | テラヘルツ / 分光 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
テラヘルツ周波数領域には多くの物質が特徴的なスペクトルを持つため、テラヘルツ分光イメージングは幅広い応用が期待されているが、計測のリアルタイム性にかけることが障害となっている。本研究では、マルチチャネル性・リアルタイム性を兼ね備えた最先端のテラヘルツ検出器であるテラヘルツカメラを用い、従来手法では不可能だった多次元的な新たな分光計測法の開拓を行っている。分光イメージングや偏光計測などをリアルタイムに実現することで、テラヘルツ波での分光イメージングが物性分野だけでなくバイオ分野でのその場観察や、製品検査などの産業応用へも広がると予想される。 当該年度には、回折格子型のテラヘルツ分光イメージング装置を構築した。パルス面傾斜法を用いてLiNbO3結晶を励起し、高強度テラヘルツ光源とした。そして高感度テラヘルツカメラを検出器に用い、回折格子型分光器を作製した。さらに、分光器入り口への集光をシリンドリカルレンズにより線状の集光に変更することで、カメラの横方向を周波数情報に、縦方向を空間情報に対応させた。これにより、カメラの多次元性を生かした分光測定が可能にした。 実証実験として、2種類の糖の粉末の空間分布のイメージングを行った。さらに、テラヘルツ領域の指紋スペクトルを元に独立成分分析を行うことで、各成分の空間分布を決定した。データ取得及び解析はビデオレートで処理が可能である。試料を一次元的にスキャンすることで10秒程度で二次元分光イメージング像を取得できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
回折格子型分光器でのリアルタイム分光イメージングは、ほぼ計画通りに成功することができた。実験系の構築、十分なS/Nのための光源の高強度化、周波数校正手法の確立、独立成分分析の適用など、想定していた課題はほぼ解決することができ、本研究の目的の一部であるリアルタイム分光イメージングを達成することができた。当該年度の成果については現在論文誌への投稿を準備している。
|
Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究により、高感度テラヘルツカメラの二次元性を活用した分光イメージングが可能であることを実証できた。回折格子型分光器では横方向が周波数情報であり、分光イメージングでは縦方向を空間情報として用いた。この縦方向を偏光情報に置き換えることで偏光分光を高速で実現できると考えられる。これを可能にする偏光素子の開発を行い、リアルタイム偏光分光を可能にする。 また、カメラの多次元性の割り振り方を変えた分光イメージングも行う。回折格子型では二次元像を得るために試料の一次元スキャンを行っており、これはカメラのリアルタイム性を用いていた。この時間軸を波長のスキャンや変調に用いることで、カメラの空間2次元はそのまま空間情報に使用した分光イメージングが可能になり、データ取得効率の高い測定が期待できる。このようなイメージングと回折格子型との比較を行う。そして、化学反応の経時変化の追跡や生体分子のイメージングなどへの応用を目指す。
|