2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17478
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
和久井 健太郎 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所・量子ICT研究室, 主任研究員 (90536442)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 真空紫外 / 高次高調波発生 / イオントラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
短波長コヒーレント電磁波の生成はX線領域に達するが、その単一原子系との相互作用の実験的研究は深紫外領域に留まっている。真空紫外領域での単一原子分光が実現すると、量子電磁気力学の高精度検証、核遷移を用いた光周波数標準など、新規応用へ道が拓ける。我々は平均出力6マイクロワットの真空紫外周波数コム(波長159nm)を実験的に生成し、それにより単一捕獲インジウムイオンを励起した際の蛍光観測レートを具体的に見積もることで、光学系の損失等を考慮しても単一インジウムイオンの真空紫外分光が実現可能であることを示した。本研究では、この提案の実現に向け、真空紫外コムを単一インジウムイオンへと高効率に集光し、励起されたイオンからの蛍光を高効率に結像できる光学系を開発する。実際にイオンや原子の分光を行うには、真空紫外コムを効率的に導波し、微小な空間領域に集光する必要がある。ところが真空紫外域では材料の吸収が大きく、高反射率・高透過率を実現できる光学素子の探索が重要となる。そこで、今年度は真空紫外コムを導波・集光するためのレンズ、ミラーを試作し、それらの特性を実測した。これらの結果から、真空紫外域であっても高いSN 比で単一イオンの分光が可能であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、まず導波集光光学系の設計を詳細に検討した。光学系は真空紫外コムを回折格子で波長分解した後、狭い波長範囲で切り出したコムの一部を高反射ミラーで導波し、レンズで集光する構成を想定した。次に光学素子の試作を行い、高反射ミラーの反射率は95%程度、レンズの透過率は99%程度が得られた。そこで、これら光学素子を用いた光学系の全体性能を計算した結果、大元で6マイクロワットの真空紫外コムを用意した場合、単一インジウムイオンからの蛍光検出レートとして1秒あたり1,000カウント以上が得られるとの見積もりを得た。これは当初の予想よりも2倍以上高く、単一インジウムイオンの深紫外遷移(波長230nm)に対する先行研究よりも高い値である。また、光源側では、非線形波長変換に用いる基本波の高強度化やパルス圧縮性能の向上により、真空紫外コムの出力を10マイクロワット以上へ高強度化することにも成功した。以上から、本年度に設計を完了した導波集光光学系を構築すれば、真空紫外域においても単一インジウムイオンの分光測定実現が十分に期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は当初の計画通り真空紫外光学系を構築し、その導波効率を実測する。また、この光学系を用いることにより、真空紫外コムの空間コヒーレンスや集光特性を評価する。以上の実験はH28年度中に完了し、学会発表および論文化を行う予定である。
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