2016 Fiscal Year Research-status Report
ナノメカニカルクーロンブロッケードシャトル現象を用いた電流標準素子の実現
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15K17483
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
東 康男 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (80452415)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 単一電子現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では電子線描画法を用いて固体基板上にナノギャップ電極構造を作製し、このナノギャップ電極観に金属ナノ粒子を導入することで、単一電子現象を起こす素子を形成し、ナノギャップ部を機械的に振動させることでナノメカニカルクーロンブロッケードシャトル現象を起因した電流標準素子を実現することを目的としている。このうち平成28年度においてはこれまでに行ってきた金ナノギャップ電極及び直径6nmの金ナノ粒子を用いることで作製できる単電子トランジスタの機能を発展させることを行った。具体的には、作製した単電子トランジスタにおいて、金ナノ粒子の近傍に浮遊ゲート電極を配置した構造を作製し、この浮遊ゲート電極への電荷の出入りにより、ソース電極・ドレイン電極の間を流れる電流が変化するメモリ効果を示すことを行った。ここで用いたナノギャップ電極並びに浮遊ゲート電極は電子線描画法のみで作製したものであり、平成27年度までで行ってきた電子線描画と無電解金メッキ法の組み合わせによる作製とは異なるものである。電子線描画法のみでナノギャップ電極を作製できるということは、電極構造を直接電子線描画で規定できることを示しており、この結果はナノメカニカルクーロンブロッケードシャトル素子の作製に寄与するものである。このように平成28年度ではこれまでに確立されたナノギャップ電極間に金ナノ粒子を導入するプロセスをとして作製した素子がナノメカニカルクーロンブロッケードシャトル現象のもととなる単一電子現象を示し、その応用例として浮遊ゲートメモリ効果の実証を行った。さらにこれに加えて平成28年度は実際にナノギャップ部を機械的に振動させるための電極構造の試作を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに作製してきた単電子トランジスタが電子線描画法と無電解金メッキ法の組み合わせでナノギャップ電極を作製したのに対し、平成28年度においては電子線描画法のみを用いてナノギャップ電極構造を作製し、このナノギャップ電極間に金ナノ粒子を導入し、単電子トランジスタを作製することを行った。電子線描画のみで構造を作製できることを実証することは、実際にナノメカニカルクーロンブロッケードシャトル素子の振動部分の構造を作製する際に必要となる手法であり、この手法を確立することが今後の電流標準素子の動作実証に向けて重要なものである。さらに今回作製したナノギャップ電極及び金ナノ粒子を組み合わせることで単電子トランジスタの作製を行い、この単電子トランジスタに浮遊ゲート電極を組み合わせることでメモリ動作を示すことを実証した。この結果から得られる電気特性は、外部からの電圧印加により金ナノ粒子上の電子数を1つずつ制御できていることを示すものとなっている。この結果はナノメカニカルクーロンブロッケードシャトル素子の動作原理となる電子1つずつの転送現象につながるものである。また平成27年度にギャップ部を機械的に振動させた際の電流を検出する装置となる微小電流―電圧変換アンプを導入し計測のための準備を整えたのに続き、実際にナノギャップ部を機械的に振動させるための電極構造の試作を行ったことから、平成28年度の研究達成度についてはおおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度については、平成27年度に蓄積したナノギャップ電極間にオクタンジチオール分子を介して金ナノ粒子を導入する手法ならびに、平成28年度に行った電子線描画のみによる電極構造の作製技術を用いることで、実際にナノメカニカルクーロンブロッケードシャトル素子を作製することを行っていく。具体的には機械的振動を起こしうる梁型の構造を有するナノギャップ電極の間に金ナノ粒子を導入する。この素子構造において電流電圧特性の測定を行い、クーロンブロッケード現象を観察することで単一電子現象が現れていることを確認する。その上で外部からの高周波信号の入力により、梁型構造を機械的に振動させその際に流れる電流を微小電流―電圧変換アンプを用いることで測定する。その際に流れる電流が、入力高周波信号の周波数と素電荷量の積で表すことができれば、金ナノ粒子を介して電子が1つずつの転送現象していることを示すものであり、機械的振動によって量子化された電流が観測されるというナノメカニカルクーロンブロッケードシャトル現象を固体基板上で実証できることに対応する。この結果を得ることで固体基板上ナノメカニカルクーロンブロッケードシャトル素子が電流標準素子としての動作を実証することができる。
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Causes of Carryover |
固体基板上でのクーロンブロッケード現象の実証や電子線描画による電極構造の直接描画など、研究自体は順調に進捗しているが、機械的振動に伴う電流の観測などさらに追加で行うべき研究内容が、これまでの研究から見出されており、それを遂行することが目的をより精緻に達成できるものと考えられるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
電子線描画に用いるレジストは使用期限が9ヶ月と限られており、その期限を過ぎると電極の作製精度に著しい劣化が見られるため、電子線レジストの更新を行い、さらに必要な消耗品の購入を行う。また研究成果が得られ次第、国内外の学会で成果報告をするための旅費として使用する。
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Research Products
(3 results)