2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K17488
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
二木 かおり 千葉大学, 大学院融合科学研究科, 助教 (10548100)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | X線光電子分光 / プラズモンロス / 弾性散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれの研究室では、量子力学に基いたXPSスペクトルのピーク解析を行っている。固体内部における光電子の伝播をさらに正確に扱うために、量子ランダウ方程式を用いて、固体中で弾性散乱されたのち、固体の外へ放出される光電子の振る舞いを明らかにしてきた。H28年度の研究計画は以下の3つでそれぞれ成果を上げてきた。 1. Al,Na,Liを用いて弾性散乱の価電子数依存性を明らかにした。固体中を伝播する電子 は価電子に散乱される。このため、試料を変えることで、弾性散乱が価電子数に依存することを明らかにした。3種類の金属の中ではAlが最も重く価電子数が多い。このためAlが最も弾性散乱の影響を受け、深さ分布のグラフの変化が大きいことを明らかにした。固体中における弾性散乱の効果は無視されてきたが、本研究により、固体の弾性散乱の効果が無視できず、プログラムに組み込んで丁寧に考察するものであることを明らかにした点で重要である。 2. 研究協力者と協力して、固体が対象であった量子ランダウ方程式をナノ粒子に拡張した。これは次年度に続く重要なテーマである。ナノ粒子のプラズモンロスピーク(XPSスペクトルに現れる電子の集団励起)など説明が十分になされていない現象を明らかにする第一歩として非常に重要で、これまでにない新しい研究である。 3. 固体内で光電子が運動する際、遮蔽ポテンシャルが生じる。これまで、理論計算から得られる式を基に、遮蔽クーロンポテンシャルを得るプログラムを組んできたが、使用用途が限定される。このため、第一原理計算からポテンシャルを得られるプログラムを共同研究者のいるレンヌ大と共同開発している。 修士の学生2名が一か月半現地に滞在し、プログラムの一部を作成してきた。これにより、様々な物質を同一プログラムで系統的に計算することが可能になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度の研究計画は以下の3つでそれぞれ成果を上げてきた。 1.当初の目的であるAl,Na,Liを用いて弾性散乱の価電子数依存性を明らかにした。Alが最も弾性散乱の影響を受け、深さ分布のグラフの変化が大きかった。H29年度には、光電子放出強度のエネルギー依存性、放出角度依存性などを計算する予定であるが、その一歩として、計算プログラムが考察に耐えうるものであることを明らかにした。 2.当初の目的であった固体が対象であった量子ランダウ方程式をナノ粒子に拡張した。理論式の展開に苦労し、プログラムの開発まで及んでいないが、想定内である。H29年度に科研費で共同研究者のいるレンヌ大に6月末に渡航し、このプログラムの開発について相談し、組んでいく予定である。 3.第一原理計算からポテンシャルを得られるプログラムを共同研究者のいるレンヌ大と共同開発している途中である。予定通りに行われており、修士の学生2名が一か月半現地に滞在し、プログラムの一部を作成してきた。H29年度も渡航予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.当初の予定通り、固体中の光電子の伝搬を扱う現プログラムを用いて、光電子放出強度のエネルギー依存性、放出角度依存性などを計算する予定である。 2.当初の予定通り、ナノ粒子に拡張した量子ランダウ方程式のプログラム開発を行う。H29年度に科研費で共同研究者のいるレンヌ大に6月末に渡航し、このプログラムの開発について相談し、組んでいく予定である。これは実際の計算まではいかず、系の波動関数やポテンシャルを計算するにとどまる可能性がある。 3.当初の予定通り、第一原理計算からポテンシャルを得られるプログラムを共同研究者のいるレンヌ大と共同開発する。修士の学生2名が6月末から一か月半現地に滞在し、プログラムを作成することが決まっている。
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Causes of Carryover |
H28年度は産休明け一年目で子供が小さく、親戚も近くにおらず、主人も単身赴任のため、海外出張・国内出張ができなかった。また、学生は学科から、渡航目標人数が決まっていて、使用用途の広いJASSOで共同研究者のいるレンヌ大へ渡航・滞在するよう推奨された。このため、旅費・人件費を使用する機会が得られなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は子供も少し大きくなり、何とかあづけられる体制を作ったため、6月末から1週間共同研究者のもとへ滞在する。JASSOも本年度は予算が減り、頼れないため、学生は科研費で共同研究者のもとへともに出向き、研究を行ってくる。 6月に旅費で40万程度、PCの購入に30万程度が見込まれる。また、9月以降国内出張(XAFS学会)に10万程度見込まれる。
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Research Products
(4 results)