2017 Fiscal Year Research-status Report
耐薬品性に優れたフッ素系高分子からなるイオン穿孔膜作製法の研究
Project/Area Number |
15K17492
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
喜多村 茜 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (50611183)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イオンビーム / 微細加工 / フッ素系高分子 / イオン穿孔 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、重イオンビームを用いて、産業レベルで現実的な作製手法のないフッ素系高分子のイオン穿孔膜作製手法及び孔径制御手法を開発することを目的としている。平成27年度においては当初計画していた「雰囲気制御下で照射できるチェンバーを作製し、飛跡内生成官能基の分析及びイオン穿孔形成挙動の分析を行うこと」について予定通り成果を得ることができた。平成28年度においては、平成27年1月7日から平成29年3月31日に産前産後の休暇と育児休業により補助事業を中断したため、成果を上げることができなかった。 平成29年度は、平成27年度に作製したチェンバーを使用する高崎量子応用研究所TIARAのサイクロトロンが、メインコイルの故障のためイオン穿孔作製に必要なエネルギーもった重イオンを生成することが不可能となり、作製チェンバーを使用した雰囲気制御の実験が実施できなかった。その代わりとして、目的である「フッ素系高分子のイオン穿孔における孔径制御手法」を達成するため、TIARAのタンデム加速器を用いて、フラーレンクラスタービームを用いてイオン穿孔の孔径制御を行った。フラーレンクラスターのビームを用いた理由は、フラーレンが炭素原子60個からなるサッカーボール状構造であるがゆえに、炭素単原子の60倍の重さ(質量数720)のイオンを、フッ素系高分子膜に照射したことと同じ影響を与えることができるというアイディアに基づく。結果として、炭素単原子ビームとの比較を通し、複数のイオンが局所的かつ同時に衝突することでイオントラックのエッチング可能な領域が拡大し、孔径制御ができることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は研究を中断したが、中断前までは順調に進捗し、酸素雰囲気中照射によってフッ素系高分子PVDF膜における穿孔径の拡大、及び開孔速度の加速を明らかにすることができた。平成29年度は当初予定していた加速器(高崎量子応用研究所TIARAサイクロトロン)の故障に見舞われたものの、代替の加速器(高崎量子応用研究所TIARAタンデム加速器)を用いて代わりとなる実験を行った。これにより、当初予定していた高エネルギー重イオン照射ではなく、フラーレンクラスタービーム(炭素60個)を一斉に材料に導入する照射条件でも孔径制御ができることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は最終年度であるため、これまでに得た成果を国際学会での口頭発表及び、論文発表を行う。国際学会SHIM-ICACS2018においては、フッ素系高分子PVDF膜におけるエッチング可能なイオントラックサイズの制御という内容で、酸素雰囲気中照射とフラーレンクラスター照射の成果について発表を行うほか、国内学会の応用物理学会や日本MRSにて、炭化水素系高分子膜との比較を通してフッ素系高分子膜のイオン穿孔形成挙動の内容について報告し、本研究成果の周知を図るとともに、この研究テーマのさらなる発展の可能性を学術界・産業界の関係者と議論する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、平成29年度に予定していた国際会議の出席を家庭の事情により取り止めたことと、平成29年度に購入を予定していたフッ素系高分子膜の購入を見送ったことにより当初計画に比べて支出額が少なかったため、次年度使用額が生じることとなったためである。 また使用計画は、平成29年度に取り止めた国際会議への参加費と旅費である。
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Research Products
(3 results)