2016 Fiscal Year Research-status Report
線形方程式系に対する新型反復ソルバーの数理的解析と新展開
Project/Area Number |
15K17498
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
相原 研輔 東京理科大学, 理学部第一部数理情報科学科, 助教 (70735498)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大規模連立一次方程式 / クリロフ部分空間法 / 丸め誤差解析 / スムージング / 最小二乗問題 / 正則化法 / ニュートン法 / レトラクション |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き,大規模な連立一次方程式を数値的に解くための反復ソルバーに対して,丸め誤差が収束性に与える影響を調査し,収束性を改善するための新しい手法の研究を行った.まず,短い漸化式を用いる解法群に有効な数値安定な計算アルゴリズムを提案した論文が学術雑誌 Numerical Algorithms に受理された.この結果から派生して,現在までに不規則な収束振る舞いを改善するスムージング技術と丸め誤差の蓄積・伝搬との関係を解析し,有益な知見を得ている.これらは,本研究の目標の一つである帰納的次元縮小法の改良に役立つと考えられる.研究成果は2017年7月にアメリカで開催される国際会議「2017 Meeting of the International Linear Algebra Society」などで口頭発表を行い,研究成果をまとめた論文を学術雑誌に投稿する予定である. また,悪条件な最小二乗問題に対する数値計算法について,行列の二重対角化を応用した効果的な正則化法を提案した論文が電子情報通信学会論文誌に掲載された.現在までに本手法の大規模問題への適用を考え,反復ソルバーと正則化法を併用した新しい計算アルゴリズムの開発とその反復停止条件について指針を立てることができている.研究成果は随時,学会等で発表し,研究成果をまとめた論文を学術雑誌に投稿する予定である. さらに,リーマン多様体上のニュートン法に関して,ニュートン方程式にクリロフ部分空間法を適用した効率的な実装法を提案した論文が学術雑誌 Optimization Letters に受理された.また,本手法の一般化に際して,点列を更新する際に利用されるレトラクションに,行列の分解アルゴリズムを利用した計算法を構築している.現在までに,その有効性を数値実験により確認しており,研究成果をまとめた論文を学術雑誌に投稿する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
短い漸化式を用いる反復ソルバーに対して,丸め誤差の影響を抑える手法を構築し,収束性が改善されることを理論的・実験的な側面から示すことができたため.また,悪条件な最小二乗問題に対する新しい正則化法の開発や,リーマン多様体上の最適化手法に線形反復ソルバーを組み込むといった研究の新たな展開が拓けたため.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究を発展させて,当初の目標である帰納的次元縮小法の解析と改良,および新旧の解法の長所を取り入れた新しいソルバー開発を目指して引き続き研究を進める.また,悪条件な最小二乗問題やリーマン多様体上の最適化手法への線形反復ソルバーの応用に関しても,理論的・実験的な側面から並行して研究に取り組む予定である.
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Causes of Carryover |
平成28年度は,当初の予定よりも物品に掛かる費用が少なく,また受理された論文が未発行であり,別刷りの購入に掛かる費用が支出されなかったためと考えられる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に発行される論文の別刷り代および執筆中の論文の投稿料等に使用する予定である.
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Research Products
(15 results)