2017 Fiscal Year Research-status Report
種々の数列のランダム性、およびその超越数論への応用
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15K17505
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金子 元 筑波大学, 数理物質系, 助教 (10706724)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 一様分布論 / 解析数論 / ベータ展開 / Pisot数, Salem数 / 代数的独立 / Smooth number / Newton法 / 線形回帰数列 |
Outline of Annual Research Achievements |
一様分布論では, 整数および実数のb進展開におけるdigitの一様性を証明することが研究目標である. 本研究では, 昨年に引き続き特殊な整数のb進展開のdigitを研究した. 特に, smooth numberと呼ばれる整数について, 一様性に関する先行研究を大幅に改良した国際共同論文が査読付き雑誌に受理された. 整数のベキ乗について, b進展開のdigitの一様性は非常に難しい問題である. 例えば, Lagariasはb進展開のdigitに現れるsubwordに関する問題を提出した. 本研究ではこの問題に関して部分的な答えを出すことに成功した. 結果を国際共同論文としてまとめたものが, 査読付き雑誌に受理および電子出版された. 実数のベータ展開におけるdigitに関する研究を行い, 超越数論に応用した. まず, 代数的数のベータ展開に現れるdigitの一様性を研究した. 特に, ベータがPisot数またはSalem数と呼ばれる特殊な代数的数の時, 一様性へのアプローチとしてdigit変化数を解析した. その結果, 先行研究の大幅改良に成功し, 現在論文を執筆中である. 超越数論への応用については, ベータ展開に関連のある実数の代数的独立性の新しい判定法を構成した論文が, 査読付雑誌に受理された. また, ベキ級数にPisot数およびSalem数を代入した値の代数的独立性に関する論文が査読付き雑誌に掲載された. 本年度は, 数論に関する問題をさらに2題考察した. p進数体において, 一般の連続関数に対するNewton法を考察することは未解決であった.さらに, ある線形回帰数列にperfect powerは有限であることを示す問題が未解決であった. これらの問題を解決することに成功した. その結果をまとめ, 2本の国際共同論文として投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
数のb進展開におけるdigitの一様性, および関連する論文を受理・出版することに成功したためである. まず, smooth numberのb進展開に関して, 従来の手法では一様性を議論することは非常に困難であった. Baker理論を用いることにより, 画期的な結果を得ることができた. この結果に関して, 国際共同論文が受理された. さらに, 日本数学会2017年度秋季総合分科会の特別講演で結果を報告した. 整数のベキ乗のb進展開に現れるsubwordについて, 従来の手法では限定的なsubwordの出現頻度以外解析できなかった. 新しい手法を導入することにより, 任意の形のsubwordを研究することが可能となった. この結果, 国際共同論文が受理された. また, 本年度ベータ展開の応用として, 実数の代数的独立性に関する論文が1本受理され, また別の1本の論文が出版された. これらの2本の論文では, 代数的独立性に関する新しい判定法が導入されているため, 今後のさらなる発展が期待される. 本年度はp進数体上のNewton法に関する未解決問題を解くことができた. 従来, Newton法はリプシッツ連続な関数のみに適用可能であった. 一般化van der Put級数という新しい手法を導入することにより, 一般の連続関数に対してもNewton法を適用できるようになった. この問題が解決されたことにより, 力学系への応用が期待される. さらに, 線形回帰数列に関する未解決問題も解くことができた. 先行研究では, orderが3以下の線形回帰数列におけるperfect powerの個数の有限性が証明されていた. 本研究では, 一般のorderの線形回帰数列について, 有限性を証明できた.
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Strategy for Future Research Activity |
数列の一様性を研究するためには, エルゴード理論など様々な理論を応用する必要がある. 本年度は, 離散力学系に伴う数列の一様性について研究する. 特に, 異なる離散力学系に関して, 一様性の条件を比べることは興味深いテーマである. 韓国に渡航し, エルゴード理論の専門家とともに, 種々の離散力学系における一様性について議論する. 特に, 過去の予備研究の成果をまとめ, 国際共同研究として論文を書く予定である. また, 整数のdigit展開に関する一様性についても研究を行う. 整数のb進展開以外にも重要な数系が数多く知られている. ところが, b進展開と比較すると, digitの一様性に関して知られていることは少ない. Fourier解析やp進解析など様々な観点から, smooth numberなど特殊な整数のdigit展開を解析する予定である. フランスに渡航し, 解析数論の専門家と数系に関して研究打ち合わせを行うことにより, 先行研究を種々のdigit展開へと一般化し, さらに結果を精密化することを目標とする. 本年は最終年度のため, 国内外の研究集会において本研究で得られた結果について報告する. 特に, フランスのマルセイユで行われる国際研究集会において, 本研究の超越数論への応用に関する結果を報告する予定である. また, 京都大学で行われる解析数論の国際研究集会において, 数列の一様性に関する本研究の成果を報告する予定である.
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