2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17518
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高井 勇輝 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, 特別研究員 (90599698)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 志村曲線 / 有理点問題 / 総実体 / QM アーベル多様体 / Hasse 原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は主として, 新井啓介氏(東京電機大)との共同研究として, 志村曲線の有理点の非存在性に関する研究を行っていた. 特に, 総実体上の四元数環の乗法群に対して定まる志村曲線に大域体での有理点が存在しないための具体的に確かめられる十分条件を, CM二次拡大体に基底変換して得られる四元数環での乗法をもつアーベル多様体(QMアーベル多様体)のモジュライであるという幾何的構造やそのアーベル多様体に付随する Galois 表現を用いた手法を用いることで, 与えることを目標に研究を行った. 証明に必要であった有限体上の QM アーベル多様体上の自己準同型環のリストアップや, QM アーベル多様体の定義体と field of moduli の関係, Galois 表現に関する議論などについて, 非自明で単純な設定であるいくつかの実二次体の場合に, 大方確認することが出来た. 現在詳細を確認しつつ論文にまとめている状況であり, 詳細が詰められた後により一般の総実体への拡張を試みる予定である. 大域体での有理点の非存在に着目している理由の一つとして, Hasse 原理の反例の構成がある. その反例の構成のためには, 志村曲線の局所体上の有理点の存在条件を記述することが必要だが, 未だ完全には知られていなかったため, 条件の記述を試みた. 局所体での有理点の存在条件は,良い素点では, 有理数体上のときに Jordan-Livne により知られていた方法の拡張を試み, 悪い素点では, Jordan-Livne-Varshavsky により知られていた存在条件を援用することで, 次数が奇数の狭義類数1の総実体上の志村曲線の場合に拡張した. こちらも詳細を確認し文章にまとめつつ, 一般の総実体への拡張を模索しているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本務での他業務として, 独立に行っている応用系の研究に多くの時間を割く必要があったことと, 家庭の事情が重なったこともあり, 本研究にあまり時間を掛けられなかったことが要因であり, そのため1年間研究期間を延長した. 実績の概要で記載したように, 研究に進捗はあるのだが, 研究結果に関する発表などに時間を割けなかったため, 次年度は得られた結果を発信することを重点的に行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き, 研究計画書に記載した内容についての研究を行い, 次年度は特に, 得られている結果を論文にまとめ, 投稿し, 国内外での発表を積極的に実施する. また志村曲線の有理点に関する研究に関しても, 詳細を確認し, より一般の総実体上への拡張を試みる.
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Causes of Carryover |
本務での他業務として, 独立に行っている応用系の研究に多くの時間を割く必要があったことと, 家庭の事情が重なったこともあり, 本研究にあまり時間を掛けられなかったため. 次年度は, 必要な書籍等の資料収集や, 国内外での研究成果の発表や研究打ち合わせを中心に使用する予定である.
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