2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K17520
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
瀧 真語 東海大学, 理学部, 講師 (30609714)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | K3曲面 / 非シンプレクティック自己同型 / モジュライ空間 / 代数幾何 |
Outline of Annual Research Achievements |
幾何的対象を考察する際,それが持つ対称性に注目することで新たな世界が見えてくることがある. 例えば,一般の三角形に対称性は無いが,二等辺三角形や正三角形のような特殊な三角形は「左右対 称」や「120 °の回転」など特別な対称性を持つ.二等辺三角形や正三角形の特殊性はこのような対称性の存在によって特徴付けられているとも言える.本研究は特別な対称性によって統制される K3 曲面を調べる.特にK3 曲面が唯一に定まるような 特別な対称性の決定,そのような対称性を持つK3曲面の幾何的な構造の考察,及びK3 曲面が持つ非シンプレクティックな対称性の分類を目的とする. 一般的に自己同型を持つK3曲面は「めずらしい」とされているが,その「めずらしさ」を 明確にする尺度にモジュライ空間の次元がある.非シンプレクティック自己同型を持つ K3曲面のモジュライ空間の構成方法は良く知られており,その次元はK3曲面の超越格子の階数と自己同型の位数で記述される.特に位数のオイラー関数の値が12よりも大きな場合は,超越格子の階数が自動的に定まり,モジュライ空間の次元が0になることがわかる.問題はこのモジュライ空間が既約か?ということである.言い換えれば,非シンプレクティック自己同型の位数を一つ定めたとき,K3曲面と自己同型の組みは一意的に定まるか?ということである.K3曲面上の非シンプレクティック自己同型の位数はリストアップすることが可能であり,この問題の部分的な先行研究は存在している.本研究はこれらの結果を包括するものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 非シンプレクティック自己同型を持つ K3曲面を考えているが,特に自己同型の位数のオイラー関数の値が12以上の場合のみを扱っている.これらに関して当初「すべて一意的に定まるはずだ」と楽観的な予想を立てていたが,反例があがった.しかしこのようなものも含めて,全貌を捉えた.部分的にJunmyeong Jang (University of Ulsan)との共同研究である. (2) 位数が7で割り切れる非シンプレクティック自己同型について幾つかの結果が得られたので"Remarks on K3 surfaces with non-symplectic automorphisms of order 7"としてarXivに投稿している. (3) 齋藤 幸子氏(北海道教育大学)との共同で予定通り「第3回 K3曲面・エンリケス曲面ワークショップ」を開催することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
得られた結果はかなり細かい計算を含んでいるので,整備して論文にまとめて公表する. また毎年開催している「K3曲面・エンリケス曲面ワークショップ」で研究交流の場を設け,位数のオイラー関数の値が12未満の非シンプレクティック自己同型の分類に取り組みたい.
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Causes of Carryover |
開催した研究集会の講演者に旅費をサポートしようとしたが,多くの講演者が自分の研究費で出張してくれた. また,年度末に図書(新刊)を購入しようとしたが,大学が利用しているシステム上にまだ登録されていなかったので,購入できなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
第4回 K3曲面・エンリケス曲面ワークショップを開催する計画がある.そこで大部分の金額を使用する予定である. 研究集会などに参加して最新の研究成果を交換し,必要であればこの研究に関連した書籍を購入して研究を行う.
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