2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K17521
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
大橋 久範 東京理科大学, 理工学部数学科, 講師 (40547006)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エンリケス曲面 / 自己同型 / エントロピー |
Outline of Annual Research Achievements |
エンリケス曲面における自己同型のエントロピー問題について考え、コホモロジー群への作用の2を法とする還元から得られる必要条件について、論文「On automorphisms of Enriques surfaces and their entropy」にまとめた。この論文はMathematische Nachrichten誌に査読後受理された。出版予定である。この一連の結果の中には、エンリケス曲面上の「任意の」自己同型に対して当てはまる分類(すなわち、局所系係数のコホモロジーへの作用が有限位数であることと、その位数がいくつになるかについての部分的な結果)が含まれている点に新しい意義がある。同時に、力学系的視点から流行している最小エントロピー問題に対してもかなり多くの必要条件を与えていて、最終的な最小エントロピーの発見に向けて貢献することができると期待している。さらに、法政大学での研究集会での講演後、「一つ一つの曲面に対する」エントロピー問題を考えることができるのではないかという面白いコメントをもらうこともできた。今後の研究に生かして行きたい。 もう一つの話題として、エンリケス曲面上の対合の分類(2013年出版済、Michigan Mathematical Journal)をより精密に理解するため、位数4の自己同型の分類を考えた。紆余曲折を経たが、現在のところ位相的な分類がひとまず完成したように思われる。ただ、格子論的な計算が非常に複雑になっていることから、族の連結性や既約性についてはまだ研究が必要という現状である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
エントロピーに関する結果をまとめたところ、望外に多くの研究者に興味を持ってもらうことができ、法政大学・名古屋大学・京都教育大学ほかたくさん講演させてもらうことができた。同時に、位数4の自己同型を一般に分類することには難所がいくつかあり、頓挫していたが、半年後になって多くの問題が氷解し、こちらも予定以上の進展が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
有限群作用の問題に戻って、ここ数年で得られた無限自己同型の理論が元の問題においてどこまで適用できるようになったかを確認する必要がある。また、途上で得られた種々の結果について論文にまとめたい。
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Causes of Carryover |
研究集会での滞在費を一部主催者側が負担してくれたため、科研費からの支出が軽減した。また、パソコンの調子が良い(壊れず動いている)。生じた次年度使用額は、今年度の研究集会やセミナー等で、近い研究をしている方を呼び、詳細な内容を自分の研究の参考にするために使いたいと考えている。
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