2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17538
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
近藤 剛史 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (60467446)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 非線形スペクトルギャップ / Wirtingerの不等式 / 固定点定理 / アフィン作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
Gromov によって示された非正曲率空間に対する Wirtinger の不等式は, Pansu によってサイクルの非線形スペクトルギャップのシャープな評価に用いられた. Gromov の証明のアイデアは Reshetnyak の定理という非正曲率空間内の閉曲線のディスク拡張のテクニックを用いるもので, そのままでは拡張が難しく見えるが, これに4点上の初等的不等式の組合せとしての別証明を与えることができることが分かっており, 他のグラフへの拡張の可能性が予想されていた. 本研究では, 実際に Wirtinger の不等式を3次対称群, 4次対称群等の非可換群にたいしても拡張できることを示し, その応用として, これらの群のコクセター群としてのケーリーグラフの非線形スペクトルギャップをシャープに評価した. この結果は豊田哲氏(鈴鹿高専)との共同研究である. 非正曲率空間に対する有限グラフの非線形スペクトルギャップは, マルグリスの超剛性定理の幾何学的一般化に向けた研究の中で本質的役割を果たすと考えられており, サイクル以外の有限グラフで非線形スペクトルギャップの厳密な値を求めることは重要なステップとなる. また一方で, 井関裕靖氏(慶應義塾大学), 納谷信氏(名古屋大学)との共同研究において, ヒルベルト空間に対する離散群のアフィン作用に関する固定点定理を得た. 等長作用の場合に知られていた結果のアフィン作用への拡張が可能であることを示したものであるが, 証明は Gromov による離散的熱流の手法を用いている点で従来と本質的に異なり, これまでとは違った方向への拡張の可能性が考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Gromov によるWirtinger の不等式は有限巡回群の上の不等式であったが, これを非可換な有限群に拡張できることが分かったため.
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Strategy for Future Research Activity |
Wirtinger の不等式は他のコクセター群に対しても成立すると予想される. 一般のコクセター群を扱うにはまだ明確なアイデアはないが, 二面体群などのランクの低いコクセター群には計算が複雑になるだけでそのまま拡張できるのではないかと思われる. これを実行し, 非線形スペクトルギャップの計算例を増やし, 一般論に向かうための足がかりとしたい.
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Research Products
(4 results)