2015 Fiscal Year Research-status Report
Hessenberg多様体のトポロジーと対称群の表現
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15K17544
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
阿部 拓 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 数学研究所専任研究所員 (00736499)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Hessenberg多様体 / コホモロジー環 / 対称群の表現 / ポアンカレ双対代数 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,枡田幹也氏,原田芽ぐみ氏,堀口達也氏との共同研究により,主にHessenbrg多様体のコホモロジー環の研究を行った.27年度の研究の主結果として,我々はregular nilpotent Hessenberg多様体のコホモロジー環はregular semisimple Hessenberg多様体のコホモロジー環の対称群の作用に関する不変部分環と次数付き環として同型であることを証明した(コホモロジーは有理数係数で考える).この結果は,幾何学的な状況が異なる2つのHessenberg多様体のコホモロジー環を繋ぐものといえる. まず上記2つの次数付き環の間に準同型を構成すること自体が自明ではなく,これまでに我々の研究によって得られていたregular nilpotent Hessenberg多様体のコホモロジー環の明示的な表示,及びregular semisimple Hessenberg多様体のトーラス同変コホモロジー環を詳しく調べることで,上記2つの次数付き環の間の準同型の構成に成功した.また,regular nilpotent Hessenberg多様体(一般に特異性をもつ空間である)のコホモロジー環が実はポアンカレ双対代数であることが上記の写像が実際に同型写像であることの証明に大きく効いている.また,我々は主結果の系として,Shareshian-Wachs予想と呼ばれている問題の自明表現部分に関する証明を与えた(その後,Brosnan-Chowらによって予想解決の証明が発表された).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Hessenberg多様体のコホモロジー環の研究(課題A)については当時の計画以上に進展している.実際,課題Aの平成27年度の目標はregular nilpotent Hessenberg多様体のコホモロジー環からregular semisimple Hessenberg多様体のコホモロジー環の不変部分環への次数付き環としての準同型を構成することであったが,それが実際に同型写像であることまで証明することができた.これは期待以上の成果があったと言ってよい.一方で,課題Aに集中的に取り組んだ為,ルート系に付随するトーリック多様体のコホモロジー環の研究(課題B)については目立った進展は得られなかった.これらを総合して,本研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究により得られた上記の環同型は2つのregular Hessenberg多様体のコホモロジー環を繋ぐものである.この研究について論文をまとめている際に,Brosnan-Chowにより,regualr Hessenberg多様体のコホモロジー群のベッチ数とregular semisimple Hessenberg多様体のコホモロジー環の(対称群の)あるヤング部分群に関する不変部分環のベッチ数が等しいことが示された.彼らは環構造ではなく,次元のみを比較しているが,彼らの結果の特別な場合として,我々の次数付き環同型のベッチ数版が得られる.そこで,今後の研究方針としては我々の結果をregualr Hessenberg多様体のクラスに拡張することである.すなわち,Jordan標準形のtypeがλのregular matrixから決まるHessenberg多様体のコホモロジー環とregular semisimple Hessenberg多様体のコホモロジー環のλから決まるヤング部分群に関する不変部分環が次数付き環として同型であるかどうかを調べることである.この研究はregular semisimple Hessenberg多様体のコホモロジー環そのものの研究と密接に関係しており,対称群の表現と相性の良い生成元の探索や,不変部分環におけるベクトル空間としての基底の構成など,様々な問題がある. ルート系に付随するトーリック多様体のコホモロジー環の研究については,B型のルート系とC型のルート系の場合のコホモロジー環の区別が可能かどうかが鍵であり,特に階数が偶数の場合に取り組んでいきたい.
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Causes of Carryover |
予定していた図書の購入を取りやめた為.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度の使用額と合わせて,研究集会に参加するための旅費・滞在費として使用することを計画している.
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Research Products
(7 results)