2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17546
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
大森 俊明 東京理科大学, 理工学部数学科, 助教 (20638225)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 指数調和写像 / Liouville性 / 離散曲面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,主に以下の二つの問題(1)と(2)に取り組んでいる。
(1)多様体間の写像の指数増大度を持つ汎函数の臨界点,いわゆる指数調和写像の性質を研究し,主にそれを用いた統一的な調和写像の存在理論を展開することを目的とする。今年度は,以下の問題に取り組んだ。 Duc氏による指数調和写像のDirichlet問題を用いて,一般の完備Riemann多様体からコンパクトRiemann多様体への指数調和写像の存在定理を証明した。また,定義域の完備Riemann多様体が非負Ricci曲率を持つ場合には,指数エネルギー有限な指数調和写像は定数に限ることを証明した。定義域がコンパクトの場合は,指数調和写像に対する勾配評価により指数調和作用素が一様楕円型になることから,対応する結果はすぐに従うが,非コンパクトの場合は,勾配評価の半径依存を精密に議論する必要があった。これらの系として,非負Ricci曲率を持つ完備Riemann多様体のコンパクト領域の非正断面曲率を持つコンパクトRiemann多様体への基本群作用が自明なものに限る([Schoen-Yau, 1976])ことを指数調和写像を用いて証明することができることも確認できた。
(2)グラフによる離散極小曲面に関する研究を行った。既存の離散曲面論は面ありきの理論のみであったが,一方,我々が目標とするのは,面の存在を問題としない新しい曲面論の展開である。我々は,次数が3のグラフの曲率(Gauss曲率,平均曲率)を,法ベクトルの変化によって定義し,Kotani-Sunadaによる標準的実現の極小性(平均曲率)について数値的に解析を行った。結果,我々が採用したGC細分では極小曲面に近づくことは期待できなかったが,よりよい細分を求めて今後も研究を続けていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度の研究計画にあげた,(1)指数調和写像流の高階評価,および,(2)Yuan-Jen Chiang氏との球面間同変指数調和写像の構成に関する研究が進まなかったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は,(1)指数調和写像流の高階評価,(2)同変指数調和写像の構成,(3)有界指数調和函数に対するLiouville性,および(4)離散曲面の適切な細分の追求,について研究を行う。(1)については,GiaquintaによるAlternative Argumentを用い,勾配のヘルダーノルム評価を得るのが目標である。(2)については,指数調和写像の勾配評価が鍵であり,今年度得られた,非コンパクト領域上の指数調和写像の勾配評価の議論が参考になると考えられる。(3)については,既存の結果である,定義域の有界断面曲率の仮定を外すのが目的である。Liouville性が理想の形で証明されているp-調和写像による近似が有効ではないかと考えている。
|
Causes of Carryover |
当初の予定通りに研究が進まなかったため,研究成果の発表のための旅費を予定額ほど執行できなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
共同研究者との研究打ち合わせを行うための旅費として執行する。
|
Research Products
(5 results)