2018 Fiscal Year Annual Research Report
Ergodicity of volume preserving dynamical systems and its applications
Project/Area Number |
15K17550
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
平山 至大 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (50452735)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エルゴード性 |
Outline of Annual Research Achievements |
閉Riemann多様体上の体積,あるいは体積と同値な確率測度を保つ微分同相写像の反復合成が生成する離散力学系のエルゴード理論について研究を実施してきた.具体的な問題は,この不変測度に関するエルゴード性の内在的判定条件を与えることである.エルゴード性は,種々の確率論的混合度合いを表す性質のうち弱い性質で,その意味では基本的な性質と言える.しかしながら,与えられた保測変換がエルゴード的であることを示すのは,数論的変換などの特殊な場合を除けば,一般に極めて難しい問題である.一方で,力学系が一様双曲型とよばれる構造を持つ場合には,安定多様体・不安定多様体が構成され,これらの幾何構造に解析的議論を適用することでエルゴード性を示すことができる.この方法(Hopf議論)を,非一様双曲型力学系について拡張することが本研究の具体的内容である.ここに非一様双曲性は一様双曲性より真に弱い性質であり,その意味で,この拡張には意義があると考えられる. さて,次元に関する特別な条件をみたすいくつかの非一様双曲型力学系については,すでにHopf型議論の拡張に成功している.そこで今年度は前年度に引き続き,一般化に向けた研究を実施した.Hopf型議論の拡張における困難は,力学系から定まる幾何構造に付随するホロノミー写像が一般に退化している点に起因する.この点について,力学系から定まる幾何構造に関するLebesgue密度点を使った議論を援用する方法で困難の解消を目指した.この方法により,部分的双曲性を持つ力学系について,その中心束に沿うLyapunov指数がすべて負である場合に進展があったものの,完全な解決には至らなかった.
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