2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17553
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 康彦 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70581502)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 作用素環 / 核型次元 / Jiang-Su環 / 分類理論 / 自己同型 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究成果は主に次の3件である。①Toms-Winter予想に関するトレース条件の拡張。②純無限C*環に対する核型次元の決定。③トレースを唯一持つ分類可能なC*環の自己同型の分類。
①これまでは、トレースを唯一つ持つ作用素環に関しToms-Winter予想が肯定的に解決できていた。Toms-Winter予想とはC*環の分類可能性に関するもので、分類可能を示す3つの条件が同値であると予想されていた。 本年度は共同研究者である N.Brown, J.Bosa, A.Tikuisis, S.White, W.Winter氏らと共にこの研究を更に推し進め、トレースの条件を拡張する事に成功した。具体的には、トレースを唯一つと仮定していた結果を、トレース空間の端点全体が有限次元コンパクトという条件へ拡張した。つまりこの研究により、Toms-Winter予想はトレース空間に依存しない問題である事が裏付けられる。更にこの共同研究では、有限次元の仮定を取り払い、Toms-Winter予想で考える3つの条件のうち2つが同値である事を示した。 ②E.Kirchberg, W.Winter, J.Zacharias氏らが定義した核型次元について、これまでに松井宏樹氏との共同研究では単純, 可分, 核型, 純無限を仮定すると核型次元が3以下である事が解っていた。分類理論において核型次元が有限である事は分類可能である事を意味し、Toms-Winter予想の基本条件の1つとなる。大雑把に述べると核型次元が低いほど、分類し易い作用素環であるといえる。今年度はこの核型次元を更に正確に計算し、純無限の場合は1であると決定できた。この数字は最適なものである事が知られている。 ③これまでの研究ではToms-Winter予想に関する研究結果から、トレースが唯一の場合は抽象的なC*環の分類定理が示されていた。この研究では、その作用素環の自己同型の分類を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目の研究計画では、「Toms-Winter予想におけるトレース条件を拡張する事」を目標としていた。その研究を遂行するにあたり、計画ではアメリカやドイツの共同研究者と連携し、拡張に必要な技術開発を目指す予定であった。本研究の一年目は、この研究指針に沿って目標となる「トレース条件」を満足のいく形で拡張できたといえる。その成果は①の研究にあたる。 当初の計画通り、5月より研究拠点をアメリカのPurdue大学へ移す事で、アメリカの専門家と情報交換が順調に進み、①の成功につながった。 特に、交通の便からアメリカ、ヨーロッパで開催される研究集会に数多く出席する事ができ、この研究結果に関する講演や情報交換を行う事ができた。当初期待していた以上にアメリカの研究集会へ参加する機会に恵まれ、本研究を意義ある結果として他の研究者へ印象づけたといえる。具体的には、交付申請書に記載した研究集会に加え、アメリカの Great Plane Operator Algebra Seminars 2015 や Penstate University のセミナーにおいて講演を行う事ができた。 両者とも作用素環を対象とした研究集会である。この長期滞在を通し、アメリカの専門家と多くの接点を持つ事ができ、本研究に関わる重要な情報を得る事ができた。 また、4月と7月にMunster大学へ短期滞在を行い、Winter氏を代表とする研究プログラムに参加した。そのプログラム期間中、各国より集まった共同研究者と連携し②に関する研究を進めた。この②の研究は当初の研究計画にはない成果であるが、本研究の方針が概ね正しい事を裏付ける結果といえる。 また、スウェーデンのMittag-Leffler研究所の滞在を2年目の研究計画として予定していたが、期間が繰り上がり、本年度2月に実施した。このスウェーデンへの1ヵ月間の滞在では、③に関する進展を得た。以上の事から当初の研究計画以上に国外での情報収集が遂行できたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も継続して研究拠点をアメリカのPurdue大学におき、アメリカの専門家と情報交換を行う予定である。一年目に得られた研究基盤を元に分類可能なC*環の群作用の分類を進める。具体的には、以下の研究集会でセミナーや講演を行い、本研究に関わる情報の収集や共同研究の推進を計画している。
7月と10月にアメリカではUniversity of Oregonにおけるセミナー講演や、毎年開かれている作用素環の研究集会East Coast Operator Algebra Symposium, 及び West Coast Operator Algebra Seminarにおいて招待講演を予定している。 また8月にはドイツのMathematisches Forschungsinstitut Oberwolfachにおける研究プログラムに参加予定である。これらの研究集会を通し、①の共同研究者であったN.Brown氏やS.White, W.Winter氏と情報交換を行い、本研究の進展が得られると期待している。 5月と7月には中国における Operator Algebras May Program, East China Normal University, 及び International conference on structure of C*-algebras and tracial approximation, Hebei normal university に招待頂き、講演の機会をいただいた。 これらの研究集会は分類理論の専門家である H. Lin 氏が主催するもので、Lin氏とは共同研究を計画中である。集会期間中、Lin氏と情報交換を行い力学系の分類に必要な技術の開発を目指す。 また、これらの成果をまとめ、8月に日本で開催する MSJ-SI, Operator Algebras and Mathematical Physicsで得られた成果を発表する予定である。
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