2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17555
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
永安 聖 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 准教授 (90455684)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 安定性評価 / 逆問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は,偏微分方程式の逆問題に於ける安定性評価のより精密な解析,特に,介在物同定の境界値逆問題に於いて,介在物に関する情報(介在物と境界との距離・介在物の大きさなど)が,安定性評価にどのような影響を与えるかについて調べることである。そのために,安定性評価の中に現れる定数が,そういった介在物に関する情報にどのように影響しているのかについての解析が必要となる。しかし一般的な状況を考えるのはまだ非常に難しいと考えられるので,本年度はある程度解析が具体的にできると思われる,元々の物体や介在物の形が共に円板に近い場合に状況を絞って解析を試みた。 この種の問題に関する先行研究として,Nagayasu-Uhlmann-Wang (2009) [NUW]が挙げられる。[NUW]では,2次元平面上に半径Rの円板の物体Ωがあるとし,その物体Ωの中の介在物がΩと同心円となる半径r (r<R)の円板D1の場合と,円板D1の摂動D2である場合を比較し,ある安定性評価を得ている。そこで本研究では,まずこれを一般化し,円板D1の中心が物体Ωと必ずしも一致しない場合についての解析を試みた。解析手法としては,まずは[NUW]の方法に倣い解析を進めたが,残念ながら現在のところ,最終的な安定性評価を得るにはまだ至っていない。 しかしながら,これは解析の手法の問題ではなく,(これだけ限定された状況でさえも)解析中に現れる式などが複雑なために時間がかかっているからだと考えている。そこで引き続き解析を続け,いち早く安定性評価を得られるよう努めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究業績の概要」でも述べた通り,現在,半径Rの円板Ωの中に,Ωと中心が一致するとは限らない半径rの円板D1が介在物としてある場合と,円板D1の摂動D2が介在物としてある場合を比較することで安定性評価を導こうとしている。今のところ最終的な安定性評価は得られていないが,それは解析手法の問題ではなく,解析の際に現れる式などが複雑なためだと考えており,このまま解析を続ければ恐らく欲しい安定性評価が得られると思われる。よって,研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは平成27年度より取り組んでいた問題,即ち,半径Rの円板Ωの中に,Ωと中心が一致するとは限らない半径rの円板D1が介在物としてある場合と,円板D1の摂動D2が介在物としてある場合を比較することで導かれるはずの安定性評価を得ることを第一の目標とする。次に,可能ならより一般の解析を行いたいが,それがまだ難しいようであれば,次は媒体内に二つの介在物があるときに,その介在物同士の距離が安定性評価にどのように影響を与えるかについて解析する。その際,まずは解析が具体的に行えるよう,線型化したモデルについて,二つの介在物が共に円板の場合を解析したい。ここで,[NUW]やここで述べている第一の目標となる結果の他,Ammari-Dassios-Kang-Lim (2007),Charalambopoulos-Dassios-Hadjinicolaou (1998),Moon-Spencer (1988)などで用いられている座標変換が有用なのではないかと考えている。
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Causes of Carryover |
当初,助成金の多くは旅費として使用する予定であったが,平成27年度はこちらの都合で宿泊を伴う出張が困難となり,結果旅費として使用する予定だった助成金が次年度使用額となった。尚,研究の方は,平成27年度は出張をしないでも進められるところから行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は前年度に比べれば宿泊を伴う出張が可能であると思われる。そこで助成金の多くは共同研究や研究発表などの際の出張費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)