2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K17562
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
天羽 隆史 福岡大学, 理学部, 講師 (10737539)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Loewner-Kufarev方程式 / Signature / Grunsky係数 / Witt代数 / tau関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
複素数平面内の原点を含む有界な単連結領域の増大列に対応するRiemann写像の族の時間発展を記述する方程式として、Loewner(-Kufarev)方程式が知られている。今回、無限個の道を入力に持つ制御型Loewner-Kufarev方程式というクラスを導入した。このクラスを導入した目的は主に二つある: (1)この方程式には、Witt代数の生成子の非負部分が全て現れることがわかる。そこから自然に期待されることとして、これが共形場理論の中でどのような立ち位置にあるのかを記述することが第一の目的である。(2)T.Lyonsが創始したRough path理論においては、制御型方程式の解として現れる出力は、入力に付随したsignatureと呼ばれる巨大な群の一要素が、初期条件に何らかの`作用'を及ぼした形で得られることが知られているが、その`作用'を代数的にきちんと定式化した文脈はない。この描像を制御型Loewner-Kufarev方程式の文脈に限ってでも、記述することが第二の目的である。これらの研究を遂行するために、10月にRoland Friedrich氏(Saarland university)を招聘し、共同研究を行った。一般に共形変換をSegal-Wilson Grassmannianに埋め込んだとき、対応するGrunsky係数を追わなければならないが、今回の共同研究により制御型Loewner-Kufarev方程式に沿って、Grunsky係数の明示公式が得られることがわかった。さらに解やこのGrunsky係数、さらには埋め込まれたGrassmannian内の点に対応するtau関数を、入力に対応するsignatureのWitt作用により記述することに成功した。この研究は2017年10月の確率解析シンポジウムにおいて同氏が講演した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は、与えられた単葉関数に対応するGrunsky係数を計算仕切ることは難しいであろうと考えていたが、今回の研究によりLoewner-Kufarev方程式に沿って対応するGrunsky係数は線形常微分方程式に従うことがわかったため、それらを具体的に計算することが可能となった。研究の初期段階においては、このことは予想すらしていなかったので、研究がより進展するきっかけとなった。これにより、制御型Loewner-Kufarev方程式の解をsignatureのWitt作用で記述することにもスムーズに繋がり、想定していたよりも良い結果へと繋がった。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究、特に制御型Loewner-Kufarev方程式に沿ってGrunsky係数が線形微分方程式に従うという事実は、制御型Loewner-Kufarev方程式が可積分系の文脈の中で捉えられることを暗示しているように思う。この構造を意識して、(1) 制御型Loewner-Kufarev方程式の共形場理論の中での立ち位置として、どのように中心電荷を与えれば良いのかをN.Kawamoto, Y.Namikawa, A.Tsuchiya and Y.Yamada (1988), ``Geometric realization of conformal field theory on Riemann surfaces", (Comm. Math. Phys. 116, no. 2, 247--308)を参考に見ていく。(2) Malliavinのcanonic diffusionと呼ばれる、単位円周の向きを保つ微分同相群の`上の'拡散過程から、共形溶接問題を通して得られる単葉関数の発展を制御型Loewner-Kufarev方程式で記述したい。共形溶接問題に関してはL.P.Teoによって、可積分形である無分散戸田階層の構造で記述されることが知られているので、この研究の参考になると考えている。(3)さらには対応する単葉関数の像をシミュレーションすることで、制御型Loewner-Kufarev方程式の入力の滑らかさと解の滑らかさの間の関係を明らかにしていく。(4)研究代表者は、canonic diffusionに対応する制御型Loewner-Kufarev方程式はある種の界面の発展を記述しているだろうと予想している。そこで、同じものになるかはまだわからないが、単位円周上のKPZ方程式との関連を意識しながら研究していく。
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Causes of Carryover |
2017年10月にRoland Friedrich氏(Saarland university)を招聘して共同研究していたが、当初考えていたよりも日本滞在期間が短かったこと、研究集会参加のための同氏の立命館大学への出張分の旅費は立命館大学の赤堀次郎氏の研究費から賄われたことによって研究費が節約された。2018年3月にはMarie Kratz氏(ESSEC CREAR)との共同研究のためにチューリッヒへ出張したが、この旅費は福岡大学の学内予算により賄われたことでも研究費が節約されている。次年度は、制御型Loewner-Kufarev方程式のシミュレーション技法などを含めて機械学習などのトピックについて知見を深めるために外国への出張を考えているため、そのための旅費に充てることを計画している。
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Research Products
(8 results)