2017 Fiscal Year Annual Research Report
Semiclassical analysis of spectral and scattering problems associated with energy crossings
Project/Area Number |
15K17563
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
渡部 拓也 立命館大学, 理工学部, 准教授 (80458009)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レゾナンス / エネルギー交差 / 準古典解析 / シュレディンガー方程式 / WKB解 / Effective Hamiltonian / 複素WKB解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度に行った3つの研究課題についてそれぞれ記す. (1)「連立シュレディンガー作用素のレゾナンスの虚部」:これまで行ってきたエネルギー交差が生成するレゾナンスの結果に基づいて,交差レベルより高いエネルギーに対応するレゾナンスを調べることに注力した.対応する古典軌道における捕捉された軌道の存在から,レゾナンスの虚部は,交差レベルに比べてより小さくなることが予想される.交差レベルより高い場合,これまでとは異なり作用素の楕円性が失われるため,超局所的な標準形に帰着させる必要があることが分かった. (2) 「擬交差間の遷移確率の断熱極限」:相互作用パラメータが断熱パラメータに比べて非常に小さい場合について研究を進めた.これは,2つの変わり点が合流するような場合に対応し,WKB解析では扱うことのできない場合である.こちらの課題も準古典超局所解析に基づく標準形を経由することにより解析を行うことが可能と期待されるが,パラメータを2つ含むこの問題では,局所的なスケール変換や逐次近似による簡約化において困難が生じるため解決に多くの時間を費やしたが,最終年度である2017年度に解決に至った. (3) 「磁場付きシュレディンガー作用素の強磁場極限」:強磁場極限は,準古典解析の応用として知られている.磁場付きシュレディンガー作用素のランダウレベルと呼ばれる多重度無限大の固有値から,ポテンシャルの摂動によりその縮退が解けて現れる固有値の分布についての研究に取り掛かった.
研究期間全体を通じた研究成果:課題(1)で得られた結果により、この課題を「エネルギー交差の上下でレゾナンスの虚部の漸近挙動がどのように変わるか」「対応する捕捉された古典軌道との関係」という視点から眺めることができるようになり,最終年度に行ったような次の課題に繋げることができたことが大きな成果である.
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