2017 Fiscal Year Research-status Report
空間非局所な作用素をもつ拡散方程式の解の漸近挙動について
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15K17566
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山本 征法 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00600066)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 関数方程式 / 関数解析 / 実解析 / 応用数学 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究課題で取り扱う「空間非局所な作用素を持つ拡散方程式」の代表的な例として、半導体素子中の荷電粒子の分布を記述する移流拡散方程式、海洋の温度分布の分析や気象モデルに現れる準地衡近似方程式、非圧縮性粘性流体の流速を表すNavier-Stokes方程式などが知られている。これらの方程式の解に共通して見られる特徴として、空間遠方での減衰が著しく遅いことが挙げられる。これは方程式に含まれる空間非局所な作用素の影響によるものであり、初期値の取り方には拠らない。当該年度は、Navier-Stokes方程式の解について、時空パラメータを共に無限大にした場合の挙動を調べた。具体的には、繰り込みにより解の高階漸近展開を導出し、展開項の各パラメータへの依存度を明示した。その結果、解の高次漸近展開に、解の空間遠方での挙動、時間遠方での挙動を描く項が現れることがわかった。また当該年度は、移流拡散方程式の解の挙動についても研究を進めた。移流拡散方程式における空間非局所な作用素は分数冪ラプラシアンであり、線形の拡散効果として働く。移流拡散方程式は元来、半線形放物型方程式として導入されたものであるが、拡散の指数を小さくしていくと、見かけ上楕円型、やがて双曲型の方程式となる。前年度までの研究で、この方程式の形状変化は本質的ではなく、いずれの場合も移流拡散方程式は放物型方程式として振舞うことを示したが、これは解の時間遠方での挙動に着目したものである。当該年度の研究では、見かけ上臨界の場合の解の、空間遠方での漸近形を導出し、やはり移流拡散方程式が放物型方程式として振舞うことを示した。移流拡散方程式に関する上述の研究は、研究協力者である滋賀県立大学の杉山裕介准教授と共同で進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究費により、研究情報の収集が円滑に行われたため。特に、国外の研究協力者との討論の機会が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の移流拡散方程式の解の挙動を研究する過程で、エネルギー法に改良を加えた。これを応用すれば、これまで困難であった準地衡近似方程式の解の空間遠方での挙動の解析が可能であると考えている。当該研究は協力者の杉山裕介氏(滋賀県立大学)と共同で進める。また、空間非局所な作用素を持つ方程式の解の挙動を考える場合、空間遠方での初期値の早い減衰を仮定するのは不自然な場合がある。より弱い仮定の下で解の挙動を評価するにはエントロピー法が有効であると予想している。エントロピー法による解の漸近解析をA. Juengel氏(ウィーン工科大学)とF. Achleitner氏(ウィーン大学)と共同で進める予定である。
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Causes of Carryover |
計算機の更新の一部を次年度に延長したため。次年度請求分と併せて、研究実施に必要な計算機を購入する予定である。
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