2015 Fiscal Year Research-status Report
双安定反応拡散方程式に対する定常解構造と界面運動の解析
Project/Area Number |
15K17569
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
菅 徹 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (60647270)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 双安定反応拡散方程式 / 分岐 / 特異極限 |
Outline of Annual Research Achievements |
双安定反応拡散方程式は、拡散率と反応率とのバランス、および領域の形状によって安定な非定数定常解を持ちうる。本研究では、反応率の大きさを分岐パラメータとした分岐解析を行うことで、安定な非定数定常解の発生メカニズムを明らかにする。一般に、分岐図式における大域的な解構造の解析は相当な困難を伴うため、適切な特異極限を考えることにより解析可能な問題への帰着を図る。 本年度は、1次元区間上の双安定反応拡散方程式を考察し、拡散係数に関する適当な特異極限で現れる極限方程式の導出と、その極限方程式に対する分岐解析を行った。考察する特異極限は、まず区間をいくつかの狭い区間Aとそれ以外の部分Bに分け、そしてBの範囲で拡散係数を一定に保ちつつ、Aの範囲における拡散係数をAの区間幅と同比率で0に近づける、というものである。 極限方程式の導出は、接合漸近展開法を用いた形式計算により行った。すなわち、拡散係数が極端に小さい部分とそうでない部分とで別々に近似解を構成した後、それらを適切につなぎ合わせ区間全体での近似解を構成し、その近似解の主要部が満たすべき方程式として極限方程式を導いた。 極限方程式の解析には相平面解析を用いた。本年度は特に、拡散係数が極端に小さい部分が区間の中点に一箇所ある場合を考察し、単調な非定数定常解が、不安定定数定常解から分岐した後に2次分岐を起こすことを示した。このとき新たに現れる解が安定であることが示唆される。また、定数定常解から分岐する単調でない非定数定常解の枝の追跡も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
極限方程式に対する比較的単純な解の分岐解析は進んだが、その他の解、特に2次分岐によって現れる解の枝の追跡やスペクトルに関する解析が、技術的な困難により予定より十分に遂行されなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
極限方程式の解構造の解明が今後の研究における基となるため、まずは極限方程式について詳細な解析を行う。分岐図式における解の枝の追跡のみならず、スペクトルに関する解析に重点を置いて研究を進める。その後、形式計算により導出した極限方程式が、どのような条件の下で正当化されるかを明確にする。
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Causes of Carryover |
イタリアでの国際学会の旅費が予定より少なく済んだことと、研究の遅れにより専門家の招聘にかかる人件費の使用がなかったことで繰越額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
特異摂動論などに関連する書籍や研究打ち合わせの旅費に充てる予定である。
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