2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K17589
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
伊藤 賢太郎 広島大学, 理学研究科, 助教 (20528351)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 数理モデル / 輸送ネットワーク / 粘菌 / 状況判断 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度と同様に粘菌の広がっていく様子を再現する数理モデルについて研究を行った.ところどころ問題があった数理モデルを論文化できるまでに完成度を上げた.また,粘菌の状況判断という観点から粘菌がどのように餌の探索を行っているかについて実際の粘菌をもちいて実験を行った.なぜこのようなことを調べたかというと,そもそも粘菌が広がる,移動するということの目的は餌の確保,探索のためであるからである.「粘菌は餌に触れると餌を覆い,餌同士を管でつなぐ」ということは広く知られている事実であるが,餌にたどり着くまでに粘菌がどのように広がり,分かれ道ではどのように選択を行うのか,という問題についてはあまり研究が行われていなかった.そこで,餌のおかれていない迷路内で粘菌がいつまでも餌を探索しつづけるという状況をつくり,そこで粘菌の振る舞いを観察した.採餌という生存のために不可欠なスキルを粘菌は進化の過程で洗練させてきたはずなので,これを通して粘菌が効率的な探索を行っていることを示し,そのような性質を明示的に組み込んでいない本数理モデルで再現することができれば,そのインパクトは大きいものとなるだろう.この実験の結果,粘菌は自らの有限なリソースをうまく集中させて探索を行っているというがわかった.数理モデルにおいても同様の振る舞いを再現することに成功したが,一部の結果はまだ力学系の言葉でうまく仕組みを説明できないでいるので,それは今後の課題としたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に進んでいるが,この年度内に論文を書き上げてしまうことができず,翌年度への持ち越しとなってしまった.この理由としては,研究代表者が所属機関を変更することが決まったためその準備等により当初の予定より研究時間を確保できなかったことが挙げられるが,研究時間の問題はすでに解決済みである.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは論文を書き上げる.また,研究計画では触れたがまだ手をつけていないテーマである,様々な状況の粘菌の広がり方についても,本モデルで再現が行えるかどうかを検証していく.特に,管の太さの成長に関して,他の生物に見られる輸送網との比較を行い,その輸送効率性について調べていきたい.
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Causes of Carryover |
研究成果の論文化が年度内に間に合わなかったため,論文の英文校閲,投稿に使う予定だった額が次年度に持ち越しになった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文の英文校閲,投稿料として使う.
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