2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17589
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
伊藤 賢太郎 法政大学, 生命科学部, 講師 (20528351)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 真正粘菌 / ネットワーク形成 / 数理モデル / 振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
粘菌の輸送ネットワーク網がどのように形成されるのかを調べるため,粘菌の広がっていく様子を再現する数理モデルについて研究を行った.昨年度までの結果として,振動しながら広がっていく粘菌の振る舞いを再現する数理モデルが得られている.この数理モデルは「粘菌の包括的な振る舞い」を一つの数理モデルで説明しようという研究から得られた数理モデルに改良を重ねた結果得られたものであったため,「厚み振動の制御」,「先端(境界)の移動の条件」,「管の成長の法則」といった様々な要素から構成されている.そのため,多くの現象を再現することが可能となっている一方で,その複雑さから「どの要素が本質的に粘菌の振る舞いの定性的変化に影響しているか」がはっきりしなくなってしまった.そのため,今年度は少し数理モデルをスリム化することで,振る舞いに強い影響を与える要素を絞り込んでいくことにした.その結果,境界の移動の条件を変えると粘菌の広がり方が大きく変化するということと,管の成長という要素がなくても,今回注目した粘菌の広がり方という定性的な振る舞いは再現できるということ,粘菌の量を変化させることにより多様な振る舞いが得られるということがわかった.その一方で,他のシチュエーション,つまり「特定の領域から粘菌が逃げ出すときに得られる管の形状」では明らかに葉脈のように管の太さにバリエーションがあるという結果が得られており,どれだけ早く領域から撤退するかといった要素に管の成長則が大きく影響しているのではないかと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は所属機関が変わり,新しい研究環境で研究をスタートアップすることになった.本課題の最終年度であるにもかかわらず,いままでの粘菌の実験設備のほとんどを手放すことになってしまったこと,例年より少ない時間しか研究に割り当てることができなかったことは残念であるが,補助期間を延長し,粘菌を自動撮影するための装置を作成中である. 当初の予定では,「粘菌が広がっていく様子」を再現した後は,他の状況下で粘菌がどのように領域から撤退するか,などを調べていく予定であったが,研究をそこまで進めることはできなかった.だが,粘菌の状況判断や探索のための戦略といった,新たなテーマも生まれたので,それらの研究も並行して行っていきたい.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では粘菌の先端の移動にばかり注目してしまったことにより,輸送網の効率性という観点からはあまり研究が進まなかった.管内部の原形質量はゼロとみなすという仮定に基づいて数理モデルを立てていたのだが,これでは輸送効率を高めようと思えば管をただ太くすればよいという話になってしまい,「管が太くなることにより生じるデメリット,コスト」が存在しなかった.今後はこれらの要素を数理モデルに取り込むことで,管を太くして流路抵抗を減らすことが他の要素とのトレードオフになるような数理モデルを構築し,そのネットワークと粘菌の広がり方の関連性について研究を進めていきたい.
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Causes of Carryover |
2017年4月に所属研究機関が変更になり,それにともない初めて担当する講義の準備に時間をとられ,研究を行う時間が十分に取れなかったため.また,現所属機関のある東京から他の都市への航空運賃が,旧所属機関のあった広島と比べて安価であるので,想定よりも予算が減らなかったため.2017年度残金は現在執筆中の論文の投稿料,及び成果発表のための講演の出張費として使用する予定である.
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Research Products
(3 results)