2015 Fiscal Year Research-status Report
セル・オートマトンモデルの計算可能な分類指標の構成
Project/Area Number |
15K17591
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
川原田 茜 静岡県立大学, 経営情報学部, 助教 (70710953)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | セル・オートマトン / 力学系 / 有限領域 / 空間一様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
セル・オートマトン(Cellular Automaton, CA)は自然科学、社会科学の様々な分野で幅広く活用されている数理モデルである。一方でCAは記号力学系(無限長の記号列空間上でシフト変換で定義される系)を拡張した力学系と捉えて挙動解析が進められてきた。数理モデルとしてのCAは有限領域で考え、力学系としてのCAは無限領域上での系として議論されている。 本研究の目的は、これまで独立に発展してきたふたつのCA研究(数理モデルとしてのCAと力学系としてのCA)をつなぎ、有限領域上で定義されたCAに対して計算可能な力学系の分類指標を与え、新たなCA力学系理論を構築を目指すことである。 初年度はまず、数理モデルとしてのCAを既存の力学系理論に載せて議論しようとした際に表れる不自然な点(空間的、時間的な一様性の崩れ)を解消したCAの再定義と用語の整備を行った。空間はD次元トーラスを離散化した空間で与え、特に一次元の場合は円周を離散化した空間とした。実際の計算機シミュレーションでは周期境界条件を課すことによってCAの完全な挙動を実装することが可能となっている。CAの規則は全てのセルに対して空間的にも時間的にも``一様''に定義されており、これはCAの重要な特徴のひとつといえる。既存のCA力学系においては空間コンパクト性を手に入れるために距離関数は空間``非一様''なものが採用されてきたが、実際CAの命題に関してはこのコンパクト性が必ずしも重要な仮定ではない場合も多かった。そこで空間一様性を反映した距離関数を定義し、位相を入れた。このCAの定義により、すべての軌道が最終的に周期軌道になるため、有限時間内で挙動をすべて網羅できる。漸近挙動を考える必要がないため、収束性に関する議論を行わずにあらゆる指標を計算することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有限領域上におけるセル・オートマトン(CA)再定義ができたためおおむね順調であるといえる。複雑さの指標の定義については今後改善の余地があるが、CAの特徴である規則の空間一様性を活かした設定はすでに整っているために、次年度に継続して進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に得られた結果により、有限領域における数理モデルCA挙動を解析するための空間設定が得られた。そこで今後は複雑な物理現象を模倣するCAモデルに対し、具体的に計算可能な複雑さの指標を与え、計算する。実データから直接CAモデルを構成する手法、統計的CA構成法(A. Kawaharada and M. Iima, Constructing cellular automaton models from observation data, Proceedings of First International Symposium on Computing and Networking 2013, 559-562, 2013)によって構成したCAについて、新たに定義した複雑さの指標で測ることにより、数理モデルCAの複雑さによる分類を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
年度末に入っていた出張予定を止むを得ない事情により1件取り消したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度の未使用額は今年度の出張旅費として使用予定である。
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Research Products
(10 results)