2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17593
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
阿部 俊弘 南山大学, 理工学部, 准教授 (70580570)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 方向統計学 / 分布論 / 時系列解析 / マルコフモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、Abe et al. (2012)の研究に引き続き、太陽と競合相手の影響により樹冠の向きがどのように影響を受けるか?という疑問に対して、シリンダー分布を用いた定量的評価により答えを与える研究論文が完成し、生態学の学術雑誌に掲載された(Aakala et al., 2016)。 Fisher & Lee (1992)にある、海辺にいるblue periwinkle[タマキビ]の移動方向と移動距離の組からなるデータのように、いくつかのシリンダーデータを眺めていると、線形成分が増加すると、角度部分の集中の度合いも増えている傾向がある。この観点で文献を調べると、そのような性質をとらえるモデルはJohnson & Wehrly (1978)の第一番目のモデルになるが、線形部分が指数分布であるため、最頻値が必ず線形部分が0の点になる。これは移動距離が0(移動なし)の部分にデータが一番集まることを意味するが、通常、観測している興味の対象となっている生き物は移動するものであるので、彼らの分布は現実のデータには当てはまりが良くない。このような問題を解決するため、Weibull分布とsine-skewed von Mises分布(Abe & Pewsey, 2011)を組み合わせることにより、新しいシリンダー上の分布族を提案した(Abe & Ley, in press)。 他にも、いくつかの風向のデータを眺めていると、風速が小さいときには風の向きに特徴がなく(一様)、風速が大きいときにはある一定の方向に集中しやすい傾向がある。また風向の集中度は時間に依存する、と考えるのが自然である。このようなデータに対応するために、我々はWehrly & Johnson(1980)のモデルの集中パラメータに時間依存性を組み込んだ円周マルコフモデルを提案した(Abe et al., in press)。 これらの論文発表以外にも、口頭による研究発表や招待講演等を行い、これまでの研究に関する研究ディスカッション以外にも、関連する研究者との交流を推し進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度に「Crown asymmetry in high latitude forests: disentangling the directional effects of tree competition and solar radiation」が生態学で国際的に権威のある学術雑誌``Oikos"に掲載された。 また、2つの論文「A tractable, parsimonious and flexible model for cylindrical data, with applications」と「Circular autocorrelation of stationary circular Markov processes」が数理統計学において国際的に権威のある学術雑誌`` Econometrics and Statistics"と``Statistical Inference for Stochastic Processes"にそれぞれ掲載予定となった。 また、当該分野に関連した研究者らと、研究集会等を通じて交流を深めることができ、今後の新しいプロジェクトを進める見込みができた。 以上、論文の掲載、研究発表、研究交流の観点から、当初の計画よりも大幅に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究交流から、かなり多くの研究推進方策がある。すべてをこのスペースで述べることは無理があるので、以下ではその一部について述べていくことにする: (1)風向のデータに対する研究成果をさらに発展させ、時系列的に観測される円周上のデータのモデリングについて考えている。この研究をこれまでの共同研究者と引き続き進めていく。 (2)樹木は何も障害がないとき、太陽の方向へ樹冠を向け成長していくが、実際は自分の身近に同じ種の競争相手がいることが普通である。Aakala et al. (2016)では、Johnson & Wehrly (1978)のシリンダー分布を用いることにより、北欧の樹木の樹冠の成長方向が競合相手からどのくらい影響を受けるか解析を行い、そこから導かれる結果が生態学的にどのように意味があるか考察した。一方で、そこで用いたシリンダー分布は単純すぎるため、樹冠データに対して十分な適合を示していない。この問題を改善するために、私はシリンダー上の柔軟な分布(WeiSSVMモデル)を構築した(Abe & Ley, in press)。現在、このWeiSSVMモデルを用いたデータ解析に関するディスカッションを進めている。 (3)Abe & Ley (in press)のモデルは扱いやすいモデルであるが、このモデルを使った応用的研究を見ると、非対称性が強いデータでは改善の余地がある。このために、より一般的な枠組みのシリンダー分布の構成法を考案している。このアイディアは基本的には、二つの独立な分布の片方をある手法を用いて条件付き分布に変換することであり、この手法を使うことにより、既存の多くのシリンダー分布が生成できることが分かった。今後はこの手法を用いてさらに応用範囲の広い新しいモデルの開発をし、理論として完成させると同時に、応用方面へ普及させていくことを目指す。
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Causes of Carryover |
次年度の国際会議に充てるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際会議ADISTA2017とCM Statistics2017の出張のための費用に使用する。
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Research Products
(7 results)