2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K17607
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鳥居 和史 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (20444383)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大質量星 / 星形成 / 分子雲 / 電波望遠鏡 / 分子雲衝突 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「2つの分子雲同士の衝突による誘発的形成」をキーワードに、天文学最大の謎のひとつである「大質量星形成のメカニズム」の解明を目指すものである。本年度の成果は以下のようにまとめられる。 (1)もっとも著名なSpitzerバブルRCW120に対し、NANTEN2, ASTE, Mopraを用いた一酸化炭素分子COスペクトル観測を実施し、このSpitzerバブルの構造と、これが内包する大質量星が、2つのサイズの異なる分子雲が、衝突したことにより形成されたことを明らかにし、その基本的な分子雲衝突モデルを構築した (Torii et al. 2015, ApJ, 806, 7)。 (2)若い巨大星団であるRCW38に対する、NANTEN2, ASTE, Mopraを用いたCOスペクトル観測を実施、この星団もRCW120と同様に分子雲衝突で形成されたことを明らかにした (Fukui, Torii et al. 2016, ApJ, 820, 26)。RCW38の年齢はおよそ10万年と非常に少く、これにより衝突直後の分子ガスの分布、運動を克明に捉えることに成功した。 (3)大マゼラン銀河の巨大な星雲N159に対し、ALMAを用いたCOスペクトル観測を実施、この星雲に含まれる大質量星のひとつが、2つのフィラメント分子雲の衝突で形成されたことを明らかにした(Fukui, Torii et al. 2015, ApJ, 807L, 4)。 (4)分子雲衝突の数値計算を実施し、分子雲衝突の時間進化と予想される観測的特徴を示した (Haworth, Torii et al. 2015a, MNRAS, 450, 10, およびHaworth et al. 2015b, MNRAS, 454, 3049)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RCW120はもっとも代表的なSpitzerバブルであり、この天体における分子雲衝突を立証し、その基本的なモデルの構築に成功した。このことは、銀河系で600個がカタログされているSpitzerバブル全体へと展開するために、非常に重要な基礎を与えた。また、RCW38は銀河系における既知の巨大星団のうちもっとも若い天体であり、この星団以外に衝突直後の分子雲の分布・運動を捉える機会を得ることは難しく、非常に重要な成果であると言える。同時に展開した数値計算とも今後比較を進めることで、分子雲衝突による大質量星形成の詳細な物理過程に迫ることが期待できる。大マゼラン銀河N159における成果は、ALMAなしでは不可能であり、世界に先駆けて大マゼラン銀河における分子雲衝突の可能性を明らかにした意義は非常に大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)RCW120における研究を通じて得た知見を元に、ASTE, Mopra, 野辺山45m鏡、JCMTなどの電波望遠鏡を用いたSpizterバブルの分子雲データを詳細解析し、統計研究を行うことで、分子雲衝突の普遍的な進化モデルを構築する。分子雲データはすでに部分的には取得済みであり、今後さらに観測を広げると共に、すでに得たデータの解析を並行して進める。 (2)若い巨大星団に対する観測的研究のサンプルを増やす。RCW38研究から得られた知見を元に、より年老いた巨大星団における分子雲衝突シナリオを追求する。 (3)以上の(1)および(2)の結果を数値計算結果と比較し、衝突圧縮面における分子雲の分布、運動や、形成される大質量星のサイズ、分布に対し、物理的な裏付けを与える。 (3)以上を総合し、銀河系でよく知られた巨大で複雑な星雲(Orion分子雲、M17、W51, Cygnus-X等)に対する分子雲衝突による大質量星形成の可能性を追求し、「すべての大質量星は分子雲衝突で作られるか否か」の問いに対し答えを与える。
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Causes of Carryover |
予算は当初予定どおり消化したが、一部消耗品により同性能でより安価なものが発売されており(ポータブルHDD)、そのため差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度予算にこの余剰金を加えることで、当初予定よりさらに増加が見込まれれる野辺山45m鏡によるSpitzerバブルCOスペクトルデータの保存用大容量ディスクの購入に充てたい(物品名:Synology DiskStation DS216j デュアルコアCPU 2ベイNASキット DTCP-IP対応可 CS6426)。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] The Two Molecular Clouds in RCW 38: Evidence for the Formation of the Youngest Super Star Cluster in the Milky Way Triggered by Cloud-Cloud Collision2016
Author(s)
Fukui, Y.; Torii, K.; Ohama, A.; Hasegawa, K.; Hattori, Y.; Sano, H.; Ohashi, S.; Fujii, K.; Kuwahara, S.; Mizuno, N.; Dawson, J. R.; Yamamoto, H.; Tachihara, K.; Okuda, T.; Onishi, T.; Mizuno, A.
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 820
Pages: 26-42
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Cloud-Cloud Collision as a Trigger of the High-mass Star Formation: a Molecular Line Study in RCW1202015
Author(s)
Torii, K.; Hasegawa, K.; Hattori, Y.; Sano, H.; Ohama, A.; Yamamoto, H.; Tachihara, K.; Soga, S.; Shimizu, S.; Okuda, T.; Mizuno, N.; Onishi, T.; Mizuno, A.; Fukui, Y.
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 806
Pages: 7-27
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Spitzer bubble CO survey2015
Author(s)
鳥居和史, 服部有祐, 長谷川敬亮, 大濱晶生, 佐野英俊, 山本宏昭, 立原研悟, 福井康雄 (名古屋 大学), 水野範和(国立天文台), 大西利和(大阪府立大学)
Organizer
ミニワークショップ「分子雲衝突でさぐる星形成」
Place of Presentation
北海道大学
Year and Date
2015-10-29 – 2015-10-29
Int'l Joint Research
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