2015 Fiscal Year Research-status Report
多波長同時偏光分光観測で明らかにする太陽彩層大気の磁気流体波
Project/Area Number |
15K17609
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阿南 徹 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (10746978)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、太陽風の加速や彩層・コロナ加熱の問題を解く上で重要な太陽光球から彩層にかけての磁場構造とその時間変化を、複数のスペクトル線を同時に高精度に偏光分光観測することで明らかにすることである。そのため当該年度では、我が国で最初の「複数の波長帯を同時に偏光分光観測できる太陽観測システム」の開発を行った。 具体的には、偏光ビームスプリッター(キューブプリズム)を購入し、それらと飛騨天文台が所有する波長板を焦点面に取り付ける機構部を設計した。この装置を偏光解析装置と呼ぶ。この偏光解析装置を用いることで、偏光情報を光の強度の変調に変換することができ、光の強度の変調を検出器で測定し、偏光情報を取得することができる。当該年度ではこの偏光解析装置の組み立てまでを行った。 また、水平分光器を用いて太陽からの偏光を正しく測定するためには、望遠鏡、開発中の補償光学装置、イメージローテータの偏光特性を調べる必要がある。この偏光特性を調べるための装置(偏光較正装置)についても、設計し、特別仕様で発注した。当該年度ではこの偏光較正装置の組み立てまでを行った。 今後は、偏光解析装置と偏光較正装置の組み立てと調整を行い、システムに組み込み、さらに性能や特性について調べ、観測を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
飛騨天文台の太陽観測に適した時期は8月である。本研究計画では平成28年度8月に科学観測を行う。現在、偏光分光観測システムの部品はおおむね組み上がり、科学観測までにシステムの組み立てと性能の確認を予定している。平成28年度7月までに性能の確認まで完了すると見込んでいるので、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度7月までに、我が国で最初の「複数の波長帯を同時に偏光分光観測できる太陽観測システム」を完成させる。平成28年度8月から10月までに、本装置を用いて観測対象に分光器のスリットを当て、スリットを固定しながら、Fe I 525 nm、Na I 590 nm、Ca II 854 nm、He I 1083 nmのスペクトル線における偏光スペクトルとその時間変化を観測する。観測対象領域は黒点などがある「活動領域」、黒点の無い「静穏領域」、コロナからの輻射が少ない「コロナホール」である。平成28年度11月以降に、各スペクトル線の偏光スペクトルから平均的な磁場と光球からの高さの関係を明らかにする。光球から彩層にかけての平均的な磁場強度の分布は、光球で生じた磁気流体波が上空に伝播する際の反射、屈折、干渉による減衰、非線形化に大きく影響するため、彩層及びコロナにおける磁気流体波による加熱や太陽風の加速を研究する上で重要な観測量である。
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