2016 Fiscal Year Research-status Report
ALMA偏波観測で明らかにする低光度活動銀河核のブラックホール降着流
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15K17619
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
永井 洋 国立天文台, チリ観測所, 特任准教授 (00455198)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 活動銀河核 / ブラックホール降着流 / アルマ / 偏波観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】本研究は近傍の低光度AGNにおける質量降着流の実態を探るべく、アルマ望遠鏡によるサブミリ波偏波観測を行い、ファラデー回転量(RM)を測定ならびに質量降着率の推定を行い、理論的に予想される質量降着流モデルとの比較を行うことにある。主に使用するデータは、自身がPIとなって推進しているアルマの観測プロジェクトで得られたデータを用いる。 【観測】アルマ望遠鏡を用いて、全4エポックにわたって(2015/5/17、2016/3/12、3/16、4/10)、近傍低光度AGNの代表であるCentaurus A(Cen A)の観測を行った(観測周波数345GHz)。 【結果】2016年2月12日と16日のデータはエラーの範囲で測定フラックスは一致したが、それ以外のエポックとの比較において、フラックスの変動が見つかった。最短で1ヶ月の変動があることから、放射源のサイズは1光月(0.026pc=約1000Rs)以下と制限される。また、すべてのエポックにおいて、偏波が検出されなかった。偏波率の上限値は0.1%で、強い制限を与えることができた。 【議論】偏波が未検出の理由として、質量降着流の非一様性に伴うファラデー消偏波が考えられ、期待されるRMは百万rad/m/m以上と見積もられる。この値から期待される質量降着率は年間0.0001-0.00001太陽質量で、これはBondi降着率よりも数倍以上高い。すなわち、Cen AのBondi半径(約25pc)よりも内側において、放射非効率移流優勢円盤から期待される降着率よりも高い降着率が実現されていることを示唆する。Cen Aは、ジェットの視線角が大きい(エッジオンで見込む)ことを考慮すると、赤道面で核周物質の密度が高い領域が存在するという描像で、観測結果を説明できる可能性がある。 【成果の準備、発表状況】以上の結果をまとめた論文を、投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【遅れの原因】本研究に用いる主たる観測データ(アルマ・サイクル2とサイクル3のデータ)が、28年度4月までに配布されると見込んて研究計画を立てていたが、実際に配布されるまでに3か月程度の遅れがあった。さらに、観測所からデータが配布された後にも、データに問題があることを発見した。アルマは、XとYの2直線偏波を同時に受信することで、偏波観測を行う仕組みになっているが、観測所が行った解析では、XとYの利得差(ゲインミスマッチ)を正しく較正できていないことがわかった。この問題をアルマ観測所に報告し、観測所による再解析を経て、28年9月から10月にかけて研究に必要なデータが揃った。 【その後の状況】観測所が実施する標準的なデータ解析に加え、追加の解析・イメージングを行い、データ解析は完了している。また、本科研費を使って、共同研究者が在籍する台湾の研究所を訪問し、約2週間にわたって、データ解析の結果を考察・議論する機会を設けた。そこでの議論をまとめ、現在、論文を投稿準備中である。 【遅れの対策】データ配布が遅れた間、米国のVery Long Baseline Array(VLBA)のデータを用いた研究も開始し、遅れを挽回する工夫をしている。詳しくは【今後の研究の推進方策 等】で述べる。
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Strategy for Future Research Activity |
【アルマデータを用いた研究】 アルマによるCen Aの観測結果は、今年度の7月を目標に論文を投稿する予定である。その後は、来期(サイクル6)に向けたプロポーザルの準備を行う。このプロポーザルでは、Cen A以外の低光度AGNをさらに5天体程度観測を行い、それらの質量降着率を見積もる。現時点での研究成果では、RM測定から求められた質量降着率は、ボロメトリック光度から期待される質量降着率よりも小さいと予想している。そこから期待される描像は、RMで測定することができる高温降着流だけではなく、低温降着流(cold accretion flow)がAGN周辺に存在していることを示唆する。この予想を別のアプローチから実証すべく、アルマ・サイクル5のプロポーザルで、AGN周辺の核周物質における低温分子ガスの分布や運動を調べる計画を提案済みである。
【VLBAデータを用いた研究】 【現在までの進捗状況】で述べたように、アルマデータの配布が遅れたことを補う目的で、VLBAによるNGC1275の観測データの解析を始めている。NGC1275は低光度AGNとセイファート銀河の中間に位置づけられる明るさを持つAGNで、Cen Aよりも高い降着率が期待される。そのため、アルマで得られたCen Aの結果と比較をすることで、AGN光度の違いが単純に高温降着流の質量降着率の違いで説明できるかという観点を調べることができる。NGC1275の研究結果は6月中に論文を投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
アルマの観測データの配布に遅延があり、当初予定していた国際研究集会への参加を取りやめた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度6月にギリシャで開催される研究会「Polarised Emission from Astrophysical Jets」に研究成果を発表するための渡航・滞在に使用する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] ALMA Science Verification Data: Millimeter Continuum Polarimetry of the Bright Radio Quasar 3C 2862016
Author(s)
Nagai, H., Nakanishi, K., Paladino, R., Hull, C. L. H., Cortes, P., Moellenbrock, G., Fomalont, E., Asada, K., Hada, K.
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 824
Pages: 10-20
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Submillimeter Polarization Observation of the Protoplanetary Disk around HD 1425272016
Author(s)
Kataoka, A., Tsukagoshi, T., Momose, M., Nagai, H., Muto, T., Dullemond, C. P., Pohl, A., Fukagawa, M., Shibai, H., Hanawa, T., Murakawa, K.
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Journal Title
The Astrophysical Journal Letters
Volume: 831
Pages: 6-12
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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