2015 Fiscal Year Research-status Report
コロナ加熱問題から迫る恒星からの質量損失率予測モデルの構築
Project/Area Number |
15K17621
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
松本 琢磨 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (50728326)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 太陽コロナ / MHD / 乱流 / アルフェン波 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽の外層であるコロナは、太陽表面の光球に比べて100倍以上高温(約100万度)であり、どのようにしてそのような超高温にまで加熱されるのかという問題は太陽物理学上の難問の一つになっている。太陽表面は粒状斑と呼ばれる対流セルで埋め尽くされており、毎秒1kmという超高速の流れが吹き荒れている。この運動エネルギーが源となりコロナを加熱すると考えられているが、それがどのように上空に輸送され熱化されるのかは完全には理解されていない。 以上の問題に対して本研究では、これまでになく高解像度な2次元磁気流体シミュレーションを行うことで問題の解決を試みた。その結果、太陽の表面である光球で発生したアルフェン波と呼ばれる磁気波動が、上空のコロナ層で散逸することで自然に高温の大気が形成されることを示せた。また、アルフェン波の散逸は主に磁気乱流によって行われることを発見し、その乱流構造を解析した。これらの発見については現在論文を執筆中である。 高温コロナの形成は、宇宙物理学的に非常に重要な問題になっている。例えば、コロナプラズマは高温であるがゆえに、ガス圧勾配力により重力を振り切ることができ、太陽風として星外部に流れ出ることができる。太陽風は、太陽のような恒星からの質量損失率を決定するため、恒星進化の観点から重要である。また、太陽風は形成初期の原始惑星の大気をはぎ取る効果もあるため、惑星形成の観点からも重要になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで用いていた磁気流体計算シミュレーションのプログラムは、乱流を取り扱う場合に精度が足りないことが分かってきた。そのため、計算スキームを改良し、新たにプログラムを作成する必要が生じたため、計画に若干の遅れが生じている。現在は新しい計算スキームを選定済みであり、プログラムを準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、三次元磁気流体シミュレーションのプログラムを完成させる。次に、太陽コロナの極端紫外線像などで頻繁に観測される、コロナループと呼ばれる構造について、3次元の磁気流体計算を行う。余裕があれば、3次元計算の計算領域を太陽風加速領域まで拡大し、太陽風が駆動されるところまで計算する。
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Causes of Carryover |
科研費を用いて参加予定であった国際会議(Hinode 9, Belfast/UK, Sep-2015)に対して、科研費交付決定前に応募していた旅費支援(宇宙科学振興会)が得られるようになったため、その分の旅費を繰り越すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の研究により、3次元計算の結果を保存するためには大量のデータストレージが必要になることが判明した。そのため、大量のデータを高速に読み書きするためのファイルサーバを構築する用途に残額を使用する。
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