2016 Fiscal Year Research-status Report
コロナ加熱問題から迫る恒星からの質量損失率予測モデルの構築
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15K17621
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
松本 琢磨 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (50728326)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 太陽コロナ / 電磁流体波動 |
Outline of Annual Research Achievements |
約6000度の冷たい光球層(太陽の表面層)の上空には100万度を超える熱いコロナ層が存在している。どのようにしてコロナを超高温に加熱するのかという問題はコロナ加熱問題と呼ばれており、太陽物理学上の難問の一つとされている。本研究の目的は、プラズマを支配する方程式である電磁流体方程式に基づく数値計算を用いて、大型計算機上にコロナ層を再現することである。100万度のコロナからはその圧力によって太陽風というプラズマ流が惑星間空間上にまで駆動されており、恒星の進化や周囲の惑星系、内惑星の大気進化などに影響を及ぼし得るため、コロナ加熱問題は天体物理学的にも極めて重要となる。 平成28年度の研究では、太陽大気を2次元面で近似し、かつてないほど高空間分解能の電磁流体シミュレーションを行うことで、計算機上に高温コロナを再現することに成功した。コロナを100万度にまで加熱するためのエネルギーを光球からコロナまで輸送するのは、アルフベン波とよばれるプラズマ波動である。本研究ではアルフベン波が、非線形的な波の突っ立ち現象により衝撃波を形成したり、複数の波動が相互作用することで乱流を駆動したりすることで、アルフベン波の持つ磁気・運動エネルギーを熱エネルギーに変換してゆく様子を詳細に捉えることができた。その結果、光球からコロナ直下までは、衝撃波による散逸が、コロナ直下からコロナ上層までは乱流による散逸が支配的になり、コロナを形成していることが分かった。これらの結果はMonthly Notices of the ROYAL ASTRONOMICAL SOCIETYに論文として出版されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計算結果から波動の散逸量を評価する方法を開発するために、予想以上の時間が費やされたが、計算自体は特に問題なくすすめることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究の問題点は、太陽大気を2次元面として取り扱った点にある。2次元面では衝撃波が膨張する過程を過小評価する傾向にある。また、複数の波動による相互作用は3次元で初めて現れる項が支配的になるという報告もなされている。そのため、平成29年度の研究では、前年度に行った2次元計算の3次元化に挑戦する。
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Causes of Carryover |
当初国際会議発表を予定していたが、研究の進捗状況により出席を見合わせたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
数値計算を三次元化することに伴う、必要な記憶容量の増加に対応するため、高速かつ大容量のSSDを購入する。
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Research Products
(3 results)