2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K17626
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川田 和正 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (10401291)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 太陽磁場 / コロナ磁場 / 惑星間空間磁場 / 宇宙線 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球に届く銀河宇宙線が太陽によって遮られる現象を「太陽の影」と呼ぶ。太陽の近くを通る宇宙線は太陽磁場によって曲げられ、「太陽の影」の形や位置に変化をもたらす。本研究課題以前に申請者は、10TeV領域の宇宙線が作る「太陽の影」を世界で初めて数値シミュレーションによって再現し、太陽コロナ磁場モデルに制限を加える事に成功した。本研究では、この新手法を用いて、さらに磁場に敏感な3TeV 領域の「太陽の影」のデータ解析を行い、それに対応する数値シミュレーションを開発し、太陽近傍磁場の構造を明らかにしていく。当該年度は、1996年から2009年の太陽活動サイクルにおいて、「太陽の影」の深さの時間変化のエネルギー依存性(15TeV~100TeV)を調べた。その結果、深さの時間変化は太陽活動と相関があり、宇宙線のエネルギーが高くなるほど変化が小さくなることが分かった。これを10TeV以上のシミュレーションと比較した結果、CSSS磁場モデルでソース面を10太陽半径に設定した場合に完全に一致した。また、2000年以降に高密度アレイ(Tibet-III)で取得された3TeV領域のデータを用いて、太陽地球間のセクター構造の向き(Toward/Away)に伴って変動する「太陽の影」のデータ解析を行った。その結果、「太陽の影」の位置は、セクター方向がTowardの場合は太陽の視位置から南にずれ、Awayの場合は北にずれることが分かり、これはパーカー磁場モデルの予想と定性的に一致している。ずれ角の大きさは、観測する宇宙線のRigdity(3~65TV)に反比例していることが確認されたが、その反比例係数の大きさはパーカー磁場モデルを仮定した簡単な計算とは一致せず、今後、詳細なシミュレーションと比較していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、主にチベット空気シャワーアレイで取得された14年間分のデータ解析を進めた。その結果、以下のことが分かった。 (1)1996年から2009年の太陽活動サイクルにおいて、「太陽の影」の深さの時間変化のエネルギー依存性(15TeV~100TeV)を解析した。その結果、深さの時間変化は太陽活動と相関があり、宇宙線のエネルギーが高くなるほど変化が小さくなることが分かり、CSSS磁場モデルでソース面を10太陽半径に設定した場合にシミュレーションと一致した。(2)2000年以降に取得された高密度空気シャワーアレイ(Tibet-III)で取得された、3TeV領域のデータを用いて、太陽地球間のセクター構造の向き(Toward/Away)に伴って変動する「太陽の影」を調べた。その結果、「太陽の影」の位置は、セクター方向がTowardの場合は太陽の視位置から南にずれ、Awayの場合は北にずれることが分かり、これはパーカー磁場モデルの予想と定性的に一致している。ずれ角の大きさは、観測する宇宙線のRigdity(3~65TV)に反比例しているが、その反比例係数の大きさはパーカー磁場モデルを仮定した簡単な計算とは一致しない。 3TeV領域のシミュレーションについては、幾つかの最適化を行い、順調にデータを蓄積中である。所属機関の計算サーバーの更新により、当初の想定より速くデータの蓄積が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、(1)いくつかのモデルを仮定した3TeV領域の「太陽の影」のシミュレーションと実験データとの比較を行い、2つの磁場モデルとモデルパラメータの検証を行う。特に、太陽地球間のセクター方向によって、太陽の影が南北にずれることが分かったが、ずれ角がパーカー磁場モデルを仮定した簡単な計算と一致しておらず、今後、詳細なシミュレーションと比較して原因を探っていく。(2)SOHO/LASCO衛星のCME(コロナ質量放出)カタログを用いて、CMEが太陽から地球に到達する期間の「太陽の影」の解析を進め、CMEにより歪んだ惑星間空間磁場が「太陽の影」に与える影響を調べる。(3)現在、情報通信研究機構の研究者にコードを提供してもらい、MHD(磁気流体力学)シミュレーションの準備を進めている。これを用いて、CME発生時の「太陽の影」のシミュレーションを行い、データと比較検証する。 以上の結果を論文に纏める。
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Causes of Carryover |
チベットの情勢不安により長期出張が、延期になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の出張に延期して、旅費に充てることを予定している。
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Research Products
(12 results)