2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17629
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 高幸 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 特任研究員 (40632360)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 素粒子実験 / X線 |
Outline of Annual Research Achievements |
Laue型ビームスプリッターでのX線回折を用いて分割したX線ビームを交差させる手法は、交差が空間的・時間的に保証されるという利点があるものの、ビームスプリッターが受けられるビーム幅が100meV程度とX線ビームのバンド幅50eVに比べて小さく、また回折効率も低いため、光子光子散乱実験のルミノシティを制限していた。 これを改善するため、Bragg型ビームスプリッターやX線自由電子レーザーSACLAの二色発振、モザイク結晶などの様々なアイディアを検討した。比較的広い回折バンド幅(1%程度)を持つモザイク結晶に関しては、SPring-8のビームラインを用いて回折効率などの特性評価を行った。これらの検討の結果、SACLAの二色発振と非対称ブラッグ反射を用いることで、Laue型ビームスプリッターを用いたセットアップに比べ6桁大きなルミノシティでの実験が可能であることがわかった。このセットアップでは光子・光子散乱が起きた際に生じるシグナル光子のエネルギーがX線ビームの光子エネルギーの1.6倍と大きいため、主要なバックグラウンド事象であるX線ビームのパイルアップの抑制が比較的容易である。 また、SACLAの性能(パルスエネルギー、バンド幅、繰り返しレート)が向上したため、従来と同様にLaue型ビームスプリッターを用いたセットアップでの光子光子散乱実験を行った。X線領域における2013年の実験にくらべ、光子光子散乱の断面積に対して3桁厳しい制限を与える結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、X線自由電子レーザーSACLAのビームをなるべく大きな角度で衝突させて実験を行う必要がある。X線を大きな角度で反射させるには結晶における回折現象を利用する必要があるが、単結晶によるBragg反射などにおいては100meV程度のエネルギー幅しか回折に寄与しない。したがってSACLAのビームの単色性が光子光子散乱のルミノシティを増加させる上で重要となる。現在のSACLAのバンド幅は50eVと広いため、これを1eV程度にまで改善するためにSASE発振ではなくself-seedingという手法による発振が計画されているが、やや予定が遅れている。そのためBragg単結晶を用いない、あるいはBragg単結晶による反射の数を減らすなどの手法の研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
SACLAのX線ビームの利用効率を増やし光子光子散乱実験のルミノシティを増大させるため、SACLAの二色発振を利用しての実験を計画中である。二色発振を用いることでSACLAの1つのビームラインから時間・空間・エネルギーが異なるX線パルス2本の発振が可能である。時間的に40fs程度まで分離させることが可能なので、片方のビームのみをSi単結晶でBragg回折させることでビームどうしを交差させることができる。これにより回折効率によるルミノシティの減少を抑え、従来の実験に比べ6桁高いルミノシティでの実験が可能となる。今後はバックグラウンド事象の研究を行い実験装置の設計・製作を進め、実際にSACLAで実験を行う予定である。
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