2016 Fiscal Year Research-status Report
トロイの木馬法を用いた世界初のビッグバン元素合成反応の間接測定
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15K17631
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早川 勢也 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (00747743)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 原子核物理学実験 / 宇宙核物理学 / トロイの木馬法 / 不安定核ビーム / ビッグバン元素合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、理化学研究所の加速器施設で前年度に承認され、11月に予定していたビームタイムに向けて、実験準備および実際の実験を遂行した。実験準備では、検出器のテストや、検出器の設置に必要な治具のデザイン、製作を本助成金を元に行った。これにより、今まで扱いが難しかった電荷分割型位置敏感シリコン検出器の非線形性、エネルギー依存性の特性を掴むことができ、十分なエネルギー・位置分解のでもって実験を行うことができた。また、検出器の較正、位置と角度の変換などの解析プログラムも実験前および実験中にある程度準備し、実験中のデータの検証、および実験後のデータ解析にスムーズに繋げることができた。 また、本実験手法のエキスパートである、イタリア・カターニアのINFN-LNS研究所のグループと実験前より十分に連絡を取り、実験のプランや固体膜標的の製作、検出器や標的の治具の修正、検出器較正用の一時ビーム散乱・反応のシミュレーションなどに関して大きな助言と貢献を得た。実際の実験では彼らのグループを数人を招聘し、その旅費も本助成金より充てた。 本実験では、ほぼすべての検出器や標的を十分に制御することができ、統計量は必要最低限であるものの、目標の2つの原子核反応2H(7Be,p7Li)1H、2H(7Be,αα)1Hを含む想定していた測定がおおむねできた。データ解析も少しずつだが着実に進んでおり、検出器の較正、高次の補正はほぼ終わり、粒子識別、反応の同定は問題なくできることは確認した。現段階では、様々な物理量を検証する段階に入っている。 また、平成28年度には、1つの国際会議、2つの国際ワークショップにおいて実験前に実験計画を発表し、大きな反響を得て総勢40人の実験参加者に繋がることとなった。3月の国内物理学会年次大会において初めて実験後に研究結果を発表し、本研究の成果を広くアピールする良い機会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね予定通り理研加速器施設でのビームタイムに向けて確実な実験準備をし、実際の実験でもほぼ想定していた測定ができたため。また、データ解析も進展を見せている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には、まず第一にデータ解析を進める。6月に2つの国際会議において研究結果を発表する予定をしており、それまでにまとまった解析結果を期待している。本年度中の論文投稿を目標としている。
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Causes of Carryover |
主な理由としては、実験に使う膜標的は実験参加者のイタリアのグループが作製し、支払いが不要になったことと、実験参加者の旅費補助のうち、想定していた航空券代の支払いが不要になったことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度には、本研究の発表のために2つの国際会議と1つの国内学会への参加を予定しており、その旅費に主に充てる。
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