2016 Fiscal Year Research-status Report
空間的小スケールの原始密度揺らぎを制限する新手法の確立
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15K17632
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須山 輝明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (20456198)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 原始揺らぎ / ブラックホール / 重力波 |
Outline of Annual Research Achievements |
小スケール原始揺らぎの研究を順調に遂行している中、昨年LIGOによるブラックホール(BH)連星合体からの重力波検出のニュースがあり、BHの起源解明が急遽重要なテーマとして躍り出てきた。そこで、見つかったBHは原始BHであるというシナリオを提唱した。原始BHは、小スケール原始揺らぎの直接重力崩壊によって生成されるため、原始BHの存在量と原始揺らぎの振幅には対応関係がある。これまで原始BHの証拠はなかったため、原始揺らぎの振幅にも上限しか課されていなかったが、今回見つかったBHが今後蓄積する観測データによって原始BHだと確定すれば、原始揺らぎの振幅も確定することになり、小スケールの原始揺らぎを制限するという研究課題を大きく進展させることになる。そこで、本年度は原始ブラックホールという観点から、小スケール原始揺らぎの研究を行った。小スケールに大振幅のテンソル型原始揺らぎがあると、ホライズン再突入時に二次摂動の効果により原始ブラックホールを生成する。一方、原始ブラックホールにはその存在量に上限が課されているので、このことを用いてテンソル型原始揺らぎの振幅に上限を課すことができる。この簡単なアイデアに基づき、宇宙論的二次摂動論を展開し、広域な周波数域のテンソル型原始揺らぎの振幅に対して、定量的な上限を与えた。得られた制限は、従来のビッグバン元素合成や宇宙マイクロ波背景放射の制限とは独立であり、また初期宇宙には超ホライズンスケールに存在したテンソル型原始揺らぎに対しては、既存の制限よりも厳しい制限与えることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブラックホール合体からの重力波という予想しない歴史的大発見があったため、研究計画に変更が生じた。見つかったブラックホールの起源解明という重要課題が俄然として浮かび上がった中、小スケール原始揺らぎと密接な関連性を持つ原始ブラックホールであっても既存の観測と矛盾しないことが本研究で分かったので、急いで論文にまとめた。原始ブラックホールの重要性が急に高まったことを受けて、小スケール原始揺らぎの研究も原始ブラックホールと関連するものにシフトさせた。
このように当初の研究計画からは幾分変更があったが、この変更により小スケール原始揺らぎを探るという本来の研究目的をより推進させることができ、この研究内容で3編の論文発表に至ったということで、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
原始ブラックホールがついに見つかった可能性が浮かび上がってきたため、原始ブラックホールという観点からの小スケール原始揺らぎの探求も続けて行うことにする。これと並行して、従来の極コンパクト暗黒物質ミニハローを用いた小スケール原始揺らぎの研究も行なう。
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Causes of Carryover |
想定していたよりも旅費にかかる航空券代やホテル宿泊代が若干安くなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に共同研究者の研究機関に滞在するためや、国際会議等への出席のための旅費に使う予定である。
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