2018 Fiscal Year Research-status Report
空間的小スケールの原始密度揺らぎを制限する新手法の確立
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15K17632
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
須山 輝明 東京工業大学, 理学院, 准教授 (20456198)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 原始密度揺らぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、3本の論文をまとめ上げ、査読付き学術誌に投稿した(2019年3月の時点で一本が掲載済)。また、7か所の国際研究会(その内5件が招待講演)、1か所の国内研究会、及び5か所でのセミナー発表(その内4件が招待)にて口頭発表を行い、これまでの研究成果の周知に努めた。また、原始ブラックホールに関する国際スクールでの講師を務め、原始ブラックホールの最先端研究の周知に努めた。 空間的小スケールの原始密度揺らぎを制限するための究極のコンパクト天体が原始ブラックホールであるが、LIGO観測所によるブラックホール連星合体からの重力波検出によって、原始ブラックホールの重要性が非常に高まっている。原始ブラックホールの元である原始密度揺らぎからは、必然的に摂動の2次的効果によって背景重力波が作られることが知られている。将来の重力波観測で背景重力波の検出・制限を課すことで、原始ブラックホール延いては小スケール原始密度揺らぎの制限を得ることができる。ところが原始ブラックホールシナリオで予言される背景重力波のパワースペクトルは、元の原始密度揺らぎを定義するゲージに依存するという問題があり、この問題解決に取り組んだ。まず2次宇宙論的摂動論の枠組みで重力波がゲージに依存する原因を見出し、特定のゲージで計算された重力波そのものを観測量としている従来の結果は再検討の必要があるという結論に至った。その後、重力波干渉計で実際に観測される信号と重力波の関係式を導いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始年後に、LIGO観測所によるブラックホール連星合体の初観測という歴史的成果が発表され、小スケール原始密度揺らぎを制限する手法としての原始ブラックホールの重要性が一気に増した。そこで、原始ブラックホールと同時に生成される原始密度揺らぎからの背景重力波のパワースペクトルの評価を行なっている。現在、重力波干渉計で実際に観測される信号への焼き直しを行なっている段階である。この方向性に沿った研究を十分に遂行するために、研究期間の1年間延長を申請し認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
LIGO観測所によるブラックホールの発見という観測からのフィードバックを最大限に利用するために、研究期間を当初予定していた研究期間からさらに1年間延長し、原始ブラックホールとの関連から小スケール原始密度揺らぎを探る研究を行う。迅速に研究を推進させるために、研究補助を行なう研究員1名を1年間雇用することにした。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、当初予定していた国際会議参加のための旅費が少なく済んだためである。次年度は、共同研究を行うポスドク研究員を当該科研費で短期的に雇用する。
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