2015 Fiscal Year Research-status Report
最新の化学強化ガラスを用いたCTA大口径望遠鏡用超軽量型分割鏡の開発
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15K17640
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林田 将明 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (60705177)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高エネルギーガンマ線 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまで、Cherenkov Telescope Array(CTA)計画における大口径望遠鏡の主鏡を構成する分割鏡を開発してきたが、本研究では、最新の化学強化ガラスを用いて、この分割鏡をより軽量な鏡に発展させることを目的としている。より軽量な鏡が実現できれば、作業の効率性・安全性の向上に加え、望遠鏡の構造上の動的な歪みの一層の抑制が期待でき、特に短時間で放射強度が激しく変動する天体の観測、例えばガンマ線バーストや活動銀河核(ブレーザー)のフレア等に対してより精度の高い安定した観測が期待できる。本年度は、この化学強化ガラスに「旭硝子」社製の「Dragontrail X」を採用し、50cm×50cmの小型試作鏡を作成した。ガラスの厚さは1.3mmと2.0mmの二種類を用いた。小型試作鏡は、60mm厚のアルミハニカムをガラスで前後から挟む構造、また表面形状は曲率半径56mの球面となっており、これら構造・形状はCTA大口径望遠鏡で実際に使用する分割鏡と同じである。この試作鏡の表面形状を、宇宙線研究所に導入した「Phase Measuring Deflectimetory(PMD)法」により測定し性能評価した。鏡面精度は理想球面からのズレが大部分が20μm以内に収まっており、目標の精度に達している事が確認できた。また、ガラス衝撃耐久性の試験として、CTAの環境試験マニュアルに沿って、金属製の玉の落下テストを3パターン実施し、その後の表面ガラス変形具合を評価した。2.0mm厚のガラスでは大きな問題はなかった一方、1.3mm厚の場合、一番厳しい条件(3cmの100gの玉を50cm上から10回落下)にて、50μm以上の変形が見られた箇所があった。この条件は要求仕様を超えたものではあるが、個性による違いも含め性能を再確認するために、ガラス衝撃耐久性試験を再度実施することとし、1.3mm 厚の小型試作鏡をもう一枚作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の通りに、2.0mm厚、1.3mm厚の化学強化ガラスを用いた小型試作鏡を作成し、鏡面精度試験と表面のガラス衝撃耐久性の試験を実施することができた。「Phase Measuring Deflectimetory法」を用いた数μm精度のガラス表面形状測定により、化学強化ガラスを用いた小型試作鏡に対して鏡面精度とガラス衝撃耐久試験を実施し、定量的な性能評価を行うことができた。これらはCTA大口径望遠鏡用の分割鏡を製作するために必要不可欠な性能評価試験であり、予定通りに実施出来た。今後の超軽量分割鏡の最終的な構成・仕様決定のためにおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ガラス衝撃耐久性を新しく作成した1.3mm厚の化学強化ガラスを用いた小型試作鏡に対して行い、これまでの結果も含めて性能を評価する。その評価に基づいてよりより大きな分割鏡を一枚作成して、PMD法を用いた鏡面精度試験や環境試験により、CTA望遠鏡に使用する分割鏡として要求仕様を満たしているか性能を評価する。また、0.7mm厚の化学強化ガラスを用いた小型試作鏡を作成し、同様に鏡面精度やガラス衝撃耐久性の試験を行う。これらの結果に基づいて、例えば、0.7mm厚では耐久性が不足している等の結論になった場合は、1.3mm厚または2.0mm厚を検討し、CTA大口径望遠鏡用超軽量型分割鏡の最終仕様を決定する。
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Causes of Carryover |
1.3mm厚の化学強化ガラスの小型試作鏡を用いたガラス衝撃耐久性の性能評価を優先し、大型試作鏡の作成を次年度に持ち越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ガラス衝撃耐久性の確認試験実施後、早期に大型の試作鏡を作成する。その後は当初の計画通り、より薄い0.7mm厚を用いた小型鏡の作成また大型鏡の性能評価のための測定装置の整備を行う。また研究発表やCTAコラボレーション会議、研究打ち合わせのための旅費としても使用する予定である。
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[Journal Article] The Optical system for the Large Size Telescope of the Cherenkov Telescope Array2015
Author(s)
M. Hayashida, K. Noda, M. Teshima, U. Barres de Almeida, M. Chikawa, N. Cho, S. Fukami, A. Gadola, Y. Hanabata, D. Horns, C. Jablonski, H. Katagiri, M. Kagaya, M. Ogino, A. Okumura, T. Saito, R. Stadler, S. Steiner, U. Straumann, A. Vollhardt, H. Wetteskind, T. Yamamoto and T. Yoshida for the CTA Consortium
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Journal Title
Proceedings of Science (the 34th International Cosmic Ray Conference)
Volume: PoS(ICRC2015)
Pages: 927
Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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