2016 Fiscal Year Research-status Report
宇宙論的観測による宇宙初期の構造形成物理の検証の研究
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15K17646
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田代 寛之 名古屋大学, PhD登龍門推進室(理), 特任講師 (40437190)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 宇宙背景放射 / 構造形成 / 一般相対性理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、宇宙の構造形成において重要な役割を果たす重力理論に焦点を当て研究を行った。現在、重力理論として最も成功し、そして広く受け入れられているものが一般相対性理論である。これは宇宙論においても同様であり、一般相対性理論の宇宙論への応用の帰結は様々な観測結果と無矛盾である。しかしながら、一般相対性理論には依然として検証すべき課題はまだまだ多くある。今回我々は、一般相対性理論における重要な原理の一つである、アインシュタインの等価原理に注目した。この原理を言い換えると、重力の感じ方は物質のエネルギー(質量)によらないという仮定であり、まさに一般相対性理論の根本をなす。そこで、我々はこの等価原理の破れの検証法として、宇宙背景放射(CMB)の振動数スペクトルに着目した。宇宙ビッグバンモデルでは、初期宇宙ではあらゆる物質が熱平衡であることからCMBも熱平衡状態の黒体放射であり、その後、CMBが熱平衡状態がから脱結合しても、一般相対性理論のもとでは、CMBは黒体放射を保持することが知られている。そこで我々はこの研究において、もし等価原理が破れているのなら、このCMBスペクトルは黒体放射からのズレが生じることを示した。CMBのスペクトルは、現代の観測の精度において黒体放射と無矛盾であることが知られている。そのため、CMB放射が黒体放射であることがから、相対性理論がかなりの精度で成り立っていることを示した。 この結果はすでに学術雑誌で論文として公表し、また国際会議等でも発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、宇宙論的観測による一般相対性理論の検証についての研究を主に行った。この研究は当初の予定にはなかった。しかしながら、一般相対性理論が宇宙論、とくにこの研究課題の焦点である構造形成に果たす役割は無視できない。そのためもあり、本研究課題において、一般相対性理論の検証もおこなうことは、きわめて自然な流れだとも言える。すでに学術雑誌に論文として公表もされており、またこの研究をもとに国際会議での口頭発表もおこなった。さらにこの研究を発展させる試みも現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、本年度予定であった宇宙論的観測を用いた暗黒物質の素粒子的性質の解明についての研究を行う。ここでいう素粒子的性質とは電荷や相互作用の断面積等をいう。これらの暗黒物質の性質は、宇宙の構造形成史に大いに影響が考えられる。まずは解析的にその影響を評価することで、研究を進めていきたい。 また同時に、宇宙論的磁場の制限の研究を進める。現在、さまざまな宇宙論的構造に付随する磁場が発見されている。そのため構造形成史を理解する上で、磁場の存在は欠くことのできないものとなっている。そこで今後は宇宙論的枠組みの中で、磁場がどう成長するかを理解し、どのように宇宙論的観測により、制限できるかを検討していく。
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Research Products
(4 results)