2016 Fiscal Year Research-status Report
波動関数と複合性から迫るハドロン共鳴状態の分子的構造の研究
Project/Area Number |
15K17649
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
関原 隆泰 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究職 (20635693)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ハドロン分子状態 / 複合性 / 波動関数 / 共鳴状態 / エキゾチックハドロン / 強い相互作用 / 量子色力学 / カイラル対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、いわゆるエキゾチックハドロンの中でも特にハドロン分子状態を取り上げ、その構造の理解と解明を「複合性」をキーワードとして探究する事である。複合性は、ハドロン分子状態を構成する全波動関数のうちの 2 体状態波動関数のノルムとして定義される。平成 28 年度は、主に複合性の理論的整備と新しいハドロン分子状態の候補の提案を行った。 (1 )任意の相互作用に対して、Lippmann-Schwinger 方程式の解である散乱振幅に存在する共鳴極の位置と留数から、束縛状態の波動関数と複合性を引き出せる事を確認した。特に、Lippmann-Schwinger 方程式が非斉次である為、散乱振幅から引き出された束縛状態の波動関数は自動的に規格化される事を明らかにした。これは、手で規格化しなければならない、斉次である Schroedinger 方程式の解の波動関数よりも性質が良い。つまり、束縛状態の波動関数を求めるには Schroedinger 方程式ではなく Lippmann-Schwinger 方程式を解く方が良い、という量子力学の基本的性質を得た。 (2) ハドロン有効模型の一つである線形シグマ模型で予言される η' N 分子状態に対して、この分子状態が重水素核を標的とする光生成反応で観測可能である事を示した。 (3) ハドロン分子状態に関連して、通常の陽子と中性子に加えて反 K 中間子を構成要素に持つ K 中間子原子核の存在が予想されている。私は、ハドロン反応理論を用いて、J-PARC E15 実験において観測されたピーク構造が反 K 中間子と二つの核子で構成される K 中間子原子核のシグナルである可能性を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に加えて、予期していなかった発見があった。例えば、束縛状態の波動関数を求めるには Schroedinger 方程式ではなく Lippmann-Schwinger 方程式を解く方が良い、という量子力学の基本的性質を得た。η' N 分子状態という新しいハドロン分子状態候補に対してその光生成を議論した。J-PARC E15 実験において観測されたピーク構造を理論的に解析し、ピーク構造が K 中間子原子核のシグナルである可能性を指摘した。 以上を鑑みて、本研究は、研究の方向性がやや変化しつつも、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成 27、28 年度の研究を踏まえ、以下の研究を進める。核子共鳴と呼ばれるハドロン励起状態の複合性を評価し、N(1440) 共鳴等の分子的成分の割合を調べる。適切なハドロン有効模型を用いて N Omega 系等を調べ、新たなハドロン分子状態の候補を挙げる。今後、それぞれの研究をまとめる度に論文を執筆し、研究成果を発表していきたい。
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Causes of Carryover |
必要な物品の費用が想定よりも低く、使用額が計画当初と異なった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成 29 年度は、NSTAR2017、HADRON2017 などの重要な国際会議が国外で開催されるので、それらに出席して本研究課題の研究成果を報告する。
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Research Products
(19 results)