2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17651
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮本 祐樹 岡山大学, 極限量子研究コア, 助教 (00559586)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニュートリノ質量分光 / 固体水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、量子固体である固体水素中で二光子放射のコヒーレント増幅を観測することにより、ニュートリノ質量分光の基本原理であるマクロコヒーレント増幅機構の高密度環境における検証をすることである。本研究の初年度は研究実施計画の通り、ターゲット作成、さらに従来と同様のジオメトリ(同軸励起)での固体中二光子放射コヒーレント増幅実験を行った。 ターゲット作成に関しては、新たに4方向に光学窓を配したセルを設計し、そのセル内に実際に高品質な固体水素を得ることに成功した。このセルを用いることで、次年度に行う予定である側面型励起の実験が可能となった。 さらに同軸ラマン励起による固体中での二光子コヒーレント増幅の観測に初めて成功した。これは固体水素のコヒーレント時間が長いという優れた特性と、これまで培ってきたレーザー技術の成果である。この結果はニュートリノ質量分光が必要とするものにより近い条件での観測であり、ニュートリノ質量分光に向けた新たな一歩である。さらにターゲット温度や励起強度などの実験パラメータに対する二光子放射強度の依存性を測定した。とくに励起パルスとトリガーパルス間のタイミング依存性において、励起パルス通過後でも、放出強度が増大するという非常に興味深い現象を発見した。この現象については現在解析を進めているところである。また、固体水素への損傷による二光子放射強度の影響も観測した。励起パルスによって損傷が起こると損傷による散乱によりコヒーレンス時間が短くなることがわかった。このような現象は実際にニュートリノ質量分光を行う上でも重要な観点となりうるため、今後も検討が必要である。以上の成果をまとめた論文の執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、ターゲット作成と同軸励起での二光子放出の観測に成功した。さらに種々のパラメータ依存性の測定に成功し、興味深い結果が得られている。おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究実施計画の通り、側面型励起によるコヒーレント二光子放出の観測を目指す。ターゲットは初年度の成果によりすでに準備できているが、実験を行う上で形状などさらなる改良が必要になると考えられる。適宜新たなセルを設計し、最適なセルを用意する。側面型励起実験では光学系の変更が必要になるため、必要な光学素子を調達し次第、順次着手する。また、得られた実験結果のさらなる理解のため、マクスウェル・ボルツマン方程式を用いたシミュレーションを含め、理論的考察を進める。
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Causes of Carryover |
ターゲットセルの開発が順調に進み、また、購入予定であった真空ポンプを既存のもの代用することができたため、当初の予定よりも支出を抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
側面励起実験に向け、各種の光学素子が必要となるため、順次調達する。また、ターゲットセルの改良も行う。状況をみて真空装置のアップグレードを行う。
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