2015 Fiscal Year Research-status Report
Double Chooz検出器を用いた未解決領域でのステライルニュートリノ探索
Project/Area Number |
15K17656
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
松原 綱之 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (30724992)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ニュートリノ振動 / ステライルニュートリノ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度前期は、年始より2基同時測定を開始したDouble Chooz検出器で取得されたデータの処理を、共同研究者らとともに行った。データ処理上の問題であった、刷新されたエレクトロニクスと新たに設置された検出器のためのツールアップグレード、及びデータ処理自動化などの課題解決を行った。申請者はオフラインツールデータ処理グループの代表者として本研究を主導し、3月に行われたMoriond国際会議に用いられた9ヶ月分のデータ処理を遂行した。 平成27年度後期は、検出器性能やバックグラウンド理解またニュートリノ混合角θ_13の精密測定を共同研究者らと協力して行った。特に、検出器性能を理解する過程で、前置・後置検出器の液体シンチレータの減衰長パラメータの違いに由来するエネルギー応答の位置一様性について研究を行い、応答の違いを理解してMCシミュレーションを調整した。また、自ら混合角θ_13の振動解析ツールの開発を行い、θ_13測定結果を得ることに貢献した。得られた結果は、Moriond国際会議にて報告された。 以上、当該年度はステライルニュートリノ探索の前段階であるニュートリノ混合角θ_13の精密測定を共同研究者と協力して達成した。来年度に予定しているステライルニュートリノ探索は、この解析手法を拡張して行うものであり、今後の探索に向けて重要なステップとなった。現在は、データの理解に基づいた測定感度の見積もりや擬似データを用いて、ステライルニュートリノ探索手法の堅牢性の評価を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究申請時の計画通り、Double Chooz前置検出器は2015年始よりデータ取得を開始し、3月には9ヶ月分のデータが解析可能となった。当初、時間を要すると懸念されていたデータ処理・検出器性能やバックグラウンド理解も十分進み、ステライルニュートリノ探索の前段階であるニュートリノ混合角θ_13の精密測定が達成された。 現在は、実データを用いたステライルニュートリノ探索を行う前に、最新の理解に基づいた測定感度の見積もりや擬似データを用いた振動解析手法の研究を行うことで、その堅牢性を評価している段階にある。近年明らかとなった原子炉ニュートリノの予測スペクトルに存在するレートの異常とスペクトルの歪みはステライルニュートリノ探索の障害となるため、引き続き慎重な研究を要するものではあるが、概ね順調に研究計画は進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず平成28年度前期は、これまでの測定で得られた検出器性能とバックグラウンドの理解を基に、測定感度の見積もりや擬似データを用いた研究をドイツ・Aachen大学のグループと協力して推進する。その際、近年明らかとなった原子炉ニュートリノの予測スペクトルに存在するレートの異常とスペクトルの歪みに留意する。これは、ニュートリノ振動を起源とする歪みではないため、距離の異なる二基の検出器で共通する現象となる。感度の見積もりの際には、レートに依らないシェイプのみを用いた手法や、二基の検出器で共通する構造の歪みをキャンセルする手法などの開発・改良を行う。実データを用いた振動解析に入る前に感度見積もりや擬似データを用いたテストを行い、解析手法の堅牢性を評価する。 平成28年度後期以降には、ステライルニュートリノ探索に十分な統計量となる約15ヶ月分のデータが使用可能となる。解析手法の堅牢性評価を十分に行った後、本研究で計画した未解決パラメータ領域でのステライルニュートリノの探索を遂行する。もし仮に、さらなる検討が必要であるという結論が得られたとしても、今後の方策について道筋をつける。
|