2015 Fiscal Year Research-status Report
X線精密分光で解明する衝撃波における粒子加速の初期過程
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15K17657
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
澤田 真理 青山学院大学, 理工学部, 助教 (00633281)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ひとみ / ASTRO-H / 超新星残骸 / 精密分光 / 銀河団 / 宇宙線 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は後半に「ひとみ」 (旧称: ASTRO-H) 衛星の打ち上げを控えて,準備研究として超熱的粒子を含めたプラズマ放射コードの改良,打ち上げ後の初期観測データをもちいての禁制線相対強度の測定を行う研究計画であった。研究実績は以下のとおりである。 プラズマ放射コードを共同開発している Jelle Kaastra 氏が2015年5月に来日した際に,コード改良に関する打ち合わせを行った。もともと予定していたオランダでの滞在研究は,研究代表者と Kaastra 氏の都合が折り合わなかったため今年度は行わなかったものの,継続的に連絡を取りながら,超熱的粒子を計算に含んだプラズマコードの改良を Kaastra 氏のグループと連携して進めた。その結果は SPEX 3.0 として公開された。一方で,このプラズマコードを使用する以前の段階,すなわち「ひとみ」衛星の生データから精密分光器 SXS のデータを取り出し,波高値をエネルギーに換算してX線スペクトルに整形するパイプライン処理の整備が急務であったため,米国 NASA GSFC に出張した。この際に,時々刻々と変動する検出器温度に依存したゲインスケールの補正手法・較正ソフトウェアを確立し,この成果を共著論文としてまとめ,投稿した。 衛星打ち上げは研究計画時の予想より若干遅く,年度末の2月17日となったため,今年度中に超新星残骸の初期データを得ることはできなかった。しかし,SXS 動作検証のために観測したペルセウス銀河団のデータをもちいて,拡散天体ではじめて鉄のK殻輝線スペクトルを精密測定することに成功した。この初期観測成果は超熱的粒子の測定を目的とした内容ではないものの,共著者のひとりとしてこれを「ひとみ」の第一科学論文にまとめ,投稿した (現在査読中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
衛星の打ち上げが年度末となり,年度内に熱的プラズマをともなう超新星残骸を観測することができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
超新星残骸のデータが得られるまでは,同様に熱的プラズマの輝線放射をともなう別種の天体を対象におなじ手法を適用した解析を行う。具体的には,2015年度末時点でペルセウス銀河団の精密X線スペクトルが得られているので,まずはこれを用いる。さらに遅延が見込まれる場合も計画時に想定しており,その場合は対象天体数が大幅に限られ,低エネルギーの輝線を出す軽い元素のみの測定となるが,XMM-Newton/RGS などの分散型の精密分光器を使用して超新星残骸の禁制線測定に挑戦する。
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Causes of Carryover |
予定していた海外出張が受け入れ先とのスケジュール調整がつかず2015年度に関しては取りやめとなった。またプラズマコード改良のために購入予定であった GPU が科研費執行可能になるタイミングと前後してメーカー廃番となり,購入先を探したものの最終的に在庫が確保できず,購入できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度は衛星完成に向けた作業のウェイトが予想よりも高くなり,そのこともあって本研究のための海外出張のスケジュールがつきづらかった。この遅れを取り戻すため,第二年度 (2016年度) にプラズマコード改良・データ解析のための海外出張頻度を増やす。GPU に関しては,当初援用する予定であった既存の計算機が,現存する GPU に対応しなくなったため購入に至らなかった。適合する GPU が見つからない場合には,計算機ごと最新のものを導入することを検討する。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Temporal Gain Correction for X-ray Calorimeter Spectrometers2016
Author(s)
Porter, F. S.; Chiao, M. P.; Eckart, M. E.; Fujimoto, R.; Ishisaki, Y.; Kelley, R. L.; Kilbourne, C. A.; Leutenegger, M. A.; McCammon, D.; Mitsuda, K.; Sawada, M.; Szymkowiak, A. E.; Takei, Y.; Tashiro, M.; Tsujimoto, M.; Watanabe, T.; Yamada, S.
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Journal Title
Journal of Low Temperature Physics
Volume: not assigned
Pages: 1-6
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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