2017 Fiscal Year Research-status Report
宇宙論的観測で探る初期揺らぎの非線形性と初期宇宙モデルの検証
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15K17659
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
横山 修一郎 立教大学, 理学部, 助教 (80529024)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インフレーション / 原始ブラックホール / 修正重力理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は7本の論文を出版した。そのうちの3本は原始ブラックホールに関する論文(うち一本はレビュー論文)だが、これは平成28年度に執筆した論文とも関連したものである。平成28年度の論文では、LIGOで検出された重力波によって発見された、ブラックホール連星が原始ブラックホールである可能性を議論した。平成29年度は、原始ブラックホールである場合にそのブラックホール連星が持つ特徴に着目し、スピン分布や連星合体頻度の質量依存性を明らかにした。これらの研究は、将来の重力波観測による原始ブラックホールの検証に大いに役立つと期待され、原始ブラックホール生成を伴うインフレーションモデルに対して重要な知見をもたらすと考えられる。また、スカラー場が初期宇宙に複数存在するようなインフレーションモデルの峻別に関する研究として、カーバトンシナリオにおける物質等曲率ゆらぎの精密評価、小スケールの初期ゆらぎパワースペクトルを用いたモデルの峻別可能性も議論した。初期磁場に関する研究も、初期宇宙モデルの検証という点で重要である。私は、その初期磁場の散逸によるエントロピー生成に着目し、宇宙マイクロ波背景輻射の観測から初期磁場に対して新たな制限が得られることを示した。研究課題としては「初期宇宙モデルの検証」ではあるが、これまでの初期ゆらぎの非ガウス性に関する研究を発展させ、銀河の3点相関を用いた修正重力理論の検証可能性に関する研究も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも書いたように、7本の論文を出版することができた。そのうちの2本は、カーバトンシナリオという、比較的大きな初期ゆらぎの非ガウス性を予言するモデルである。当該論文では、非ガウス性と相補的な観測的検証手法である、小スケールゆらぎと物質等曲率ゆらぎに着目し、その検証可能性を議論した。この「非ガウス性を与える初期宇宙モデルの精査」というテーマは当初の研究計画にも記載されているものである。また初期ゆらぎの非ガウス性に関するこれまでの研究の発展として、修正重力理論の検証に関する研究も行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、本研究課題も最終年度となるが、近年注目して研究の対象としてきた原始ブラックホール形成における初期ゆらぎの非ガウス性の影響に関する研究を行う。また研究計画にも記したベクトル、テンソル、スカラー相互作用に関する研究もまとめるつもりである。さらに、これまでの研究成果を研究会、セミナー等で積極的に発表してく。
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Causes of Carryover |
主に旅費として使用する予定であったが、研究内容を論文としてまとめることに時間を要し、国際学会や国内研究会に出席し成果を発表する機会が少なかったため。
平成30年度は最終年度ということもあり、積極的に研究会に参加し発表していく予定である。また共同研究者との打ち合わせなどにも使用する。
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