2015 Fiscal Year Research-status Report
既存原子炉および次世代原子炉の安全性向上を目指したMA遅発中性子の影響解明
Project/Area Number |
15K17663
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
湊 太志 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究員 (00554065)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遅発中性子 / ベータ崩壊 / 核構造 / 崩壊熱 / 核データ |
Outline of Annual Research Achievements |
核分裂を利用した原子炉の重要な開発要素の一つである遅発中性子の未測定データを、最新の核構造理論を基に理論予測し、安全な原子炉設計に資する遅発中性子データベースを構築することを目的とした研究を行っている。平成27年度は、核構造理論モデルに基づいたベータ崩壊計算コードを用いて以下の6点について行った。(1)これまで計算することができなかった奇数核種も理論計算できるように計算コードを改良した。これにより、あらゆる基底状態にある核種の計算が可能となった。(2)許容遷移だけではなく、第一禁止遷移も計算できるように改良を行った。これにより1+状態だけではなく、0-,1-,2-状態へのベータ崩壊も記述できるようになった。(3)ベータ線とガンマ線のエネルギーを求めるように計算コードを改良した。これにより崩壊熱計算に必要なデータの一部を提供することができるようになった。(4)計算コード内の遅発中性子計算部の改良を実施し、これまでよりも高精度に遅発中性子放出率を求めることが可能になった。(5)適切な核子間相互作用パラメータを決定し、改良した計算コードを用いて399核種のベータ崩壊の計算を行った。その結果、以前のベータ崩壊計算コードの結果よりも精確に実験データを再現できることが分かった。特にベータ崩壊の半減期に関しては、現在JENDL(日本原子力研究開発機構 核データ研究グループ http://wwwndc.jaea.go.jp/index_J.html)で提供している「核構造・崩壊データ」に用いられている大局的理論によるものより、高精度に実験データを再現できるようになった。(6)H27年度の成果を、日本原子力学会(講演番号3J12)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究を進行していく中で、ガンマ線の予測精度が従来よりも大きく異なっているという課題が見つかった。この問題を解析した結果、理論計算によるベータ崩壊のQ値を使っていることが原因であることが分かり、評価値のQ値を利用することで解決できることが分かった。この問題解決のために、遅発中性子データベースを作成するという当初の実施計画よりも若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、現在作成が遅れている遅発中性子データベースを早期に完成させ、JENDL核分裂収率ライブラリと融合させ総和計算により総遅発中性子量を求める。その後は当初の予定通りに研究の実施計画を進めることができる見込みである。
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Causes of Carryover |
購入予定だった計算機の見積額と実際の確定金額に差が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
東京工業大学の千葉研究室が、核分裂収率の評価を新たに行っている。その評価は遅発中性子と深く関連があり、当該研究の成果をより充実させられる可能性がある。そのため千葉研究室と議論をするため、東京工業大学への出張旅費として次年度使用額を利用する。また、翌年度分として請求した助成金については当初予定通り、ネットワークHDDの購入と物理学会および国際会議参加の旅費に使用する。
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Research Products
(3 results)