2015 Fiscal Year Research-status Report
新奇反強磁性を示す近藤半導体の解明にむけた高温高圧合成法からのアプローチ
Project/Area Number |
15K17687
|
Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
川村 幸裕 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70612430)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 高圧合成 / 結晶構造 / 測定環境整備 / 高圧低温 / 反強磁性 / 近藤半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は反強磁性と近藤半導体が共存する新奇な化合物CeRu2Al10とその関連物質に関して従来とは異なる試料合成法(高温高圧合成法)で試料合成を行い、物性を調べ、従来の合成法による物性と比較することで、新奇な物性の解明に導くのが目的である。また、高圧という共通するキーワードで高圧下における構造の観点からもこの物質を調べることで多角的なアプローチにより解明に努めている。この目的の為に、高圧合成の合成条件を見つけること、合成試料を測定するための測定環境を整えることが必要である。 1. 測定環境の整備:一通り、測定できる装置が揃い、電磁石など古い装置の修復・および動作確認などの整備を行った。 2. 高圧合成:CeRu2Al10を高圧合成法による試料の合成を試みた。CeRu2Al10は斜方晶YbFe2Al10型の結晶構造を示すが、この結晶構造を主相とする物質を得たことがX線解析の結果わかった。一方で未だ不純物を含んでいるため、引き続き最適合成条件を探す必要がある 3. CeRu2Al10系の構造解析:放射光X線によりCeRu2Al10および関連物質のCeOs2Al10の新奇反強磁性を構造の観点から高圧力・低温下で調べた。この反強磁性転移は加圧により突然消失し、その近傍で構造の変調が予想された。しかし、我々は反強磁性転移温度付近や突然消失する圧力付近で構造変化が起きないことを明らかにした。また構造の収縮を詳細に調べ、物性と比較することにより特定の方向への収縮が物性に大きく影響することがわかった。この物質の新奇な特徴に異方的c-f混成が重要であると提案されているが、本研究はそれを支持する結果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的のためには高圧合成法により試料を合成し、基礎物性を測定する必要がある。 高圧合成に関しては目的とする物質を主相とするものが得られており、合成の足がかりを見つけている。後は純度の高い物質を得るために、合成温度・合成圧力を変化させ、最適な合成条件を模索する。 基礎物性の測定環境の整備は順調に進んでいる。当初、既存の古い冷凍機を整備し直す予定であったが、本研究費とは別の予算で新しい冷凍機を買うことができた。そこで本年度はこの冷凍機の設計相談・注文を行い、電磁石などの古い装置の修復整備をおこなった。また、予定通り本研究費で不足している測定装置を購入し、動作確認をおこなった。Heの配管などの整備をする必要があり、さらに測定プログラム作成・磁化率用コイル作成などにより今年度中には磁場中を含めた電気抵抗・ホール効果・磁化率測定が可能になる予定である。 圧力下の構造の研究に関しては研究が一段落つき、論文にまとめることができた。この結果はJournal of Physical Society of Japan四月号に掲載された。また、この構造の研究の成果に対して遷移金属を含む固体化合物の国際会議SCTE2016においてkeynote presentationに選出された。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的のためには高圧合成による試料の合成とその試料の測定が必要である。その為に、引き続き測定環境の整備を行い、まずは磁場中を含めた常圧の電気抵抗・ホール効果・磁化率測定を可能にする。すなわち4Heの配管を整備し、常圧用サンプルホルダー・測定プログラム・磁化率用コイルを作成し、磁場分布を調べる。次にピストンシリンダー型及びダイヤモンドアンビル型圧力セルを冷凍機へ組み込み、圧力下における上記の基礎物性を測定可能にする。 高圧合成に関しては圧力・温度条件を変えていくつか合成を試みることで、より純良な試料の育成を行う。一定以上の純度の試料ができたら順次測定する。また、一つの化合物で最適な合成条件が見つかり次第、同じ条件で一部の元素を置換したものを合成する。すなわちCeRu2Al10に対してCe(Ru1-xRhx)2Al10, CeRu2(Al1-xGax)10を合成する。一般に母物質と置換系の物質は同じ合成条件である場合が多く、母物質と同様の条件で他の試料も順次できていくと予想される。
|
Causes of Carryover |
予定していなかった別予算で冷凍機が購入できたことにより、必要になる消耗品費が変更したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定通り、高圧合成用の試料・高圧合成用圧力媒体等消耗品・高圧下物性実験用のダイヤモンドアンビルを購入する。高圧合成用圧力媒体等消耗品は元々の申請額でも十分ではないため、繰越した分もこの消耗品に使用する。また、予定通り、論文投稿費および、国際会議・国内会議の旅費に使用する。
|
Research Products
(23 results)